公園の悪魔ともう一人の悪魔

 2011年の短編置き場にある、「そして無為」という短い話をご存知でしょうか。この話に出てくる「J」が公園の悪魔シリーズに出てくる悪魔さんである、という可能性の話をさせていただきます。

 悪魔さんとJの共通点は
・目元を隠す前髪
・背格好、話し方
など。主に外見的な特徴しかありません。
 しかし、Jの口癖にある、
「金切り声さえ美しかったんだ、大層な嘘吐きだったけれど」
というものを思い出していただくと、叶恵が浮かびませんでしょうか。
 叶恵はやや怒りっぽく、加えて悪魔さんがちょっかいを出すもので、彼と話すときは大概不機嫌でした。さらに、エイプリルフールで言葉遊びの果てに嘘を吐かされたのはどちらだったか?嘘吐きが指すのは一人しかいません。

 そして、最後にJの行動について。彼は日常生活が不詳で、最後にはビルの五階から忽然と消えていなくなります。秋乃が彼と最後に話した場所は、公園でした。
 JはJudasのJ。秋乃の話し方はどことなく、叶恵に似ています。つまりJは初めから、Jと名乗った時点でさようならを告げていたようなもので、秋乃を見てはいなかったのです。しかし、最後にたった一度だけ名残惜しむような顔を見せます。それは彼が、秋乃の中に叶恵を見ていたからなのか、もしくはそうであったからこそ、最後に秋乃自身の顔を見て行こうと思ったのか。

 これはあくまで可能性の話であり、確かなものではありませんが、これらのことからJ=悪魔さん説をここに書き留めさせていただきました。叶恵と悪魔さんはどんな形であれ、叶恵の生きる限り何かしらの関係を持ち続けることでしょう。
 つまり、「そして無為」の世界は叶恵のいなくなった後の、「公園の悪魔」なのかもしれません。これが本当であるならば、Jを「亡霊のような恋を追っている」とした秋乃の台詞は存外、Jとして出会った一人の悪魔の本質を分かっていたということなのです。

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