黎明



今頃 何処かで
月の花が
冷たい石畳の上
咲くのだろう

真っ白な足音
誰かの瞬き
風が吹くだろう
唄をのせて

罅割れた曇り硝子の空
始まりも終わりもない
この世界 閉じ込めて


歌が聴こえる
夜明けまでをただ数える
透明な聲
詩が聴こえる
空っぽの塔を辿り昇る
聲が


今頃 何処かで
僕の影が
月の花 ひとつ摘んで
眠るのだろう

朽ち果てた時間に
息を吸い込む鳥は
風を捜すだろう
唄にのって

地下水に根を張る
石畳の砕けた夜の下

罅割れた曇り硝子の空
始まりも終わりもない
この世界 誰のため


謌が聴こえる
幾夜も幾夜もまた今宵も
祈る蒼い聲
謳が聴こえる
朝を捜して
迷いながら溶けてゆく
聲が


透明な鳩が一羽
空の先へ消えてゆく
月明かり 照らす影は
まだ少し鮮やかなまま


歌が聴こえる
夜と昼を抱いては響く
透明な聲
詩が聴こえる
空っぽの塔を辿り昇る
辿り響く


聲 が





黎 明





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