Twitter企画にて
書き出し提供・甘奈さん

 硝子の城は、もう無い。月に喰われてしまったから。狼の足に踏み砕かれて、意地悪な魔女の火に炙られ溶かされて、どろどろに朽ちて月の光に飲み干されてしまったの。
 ――私たち、なんて綺麗なんでしょう。
 裸足の姫君が微笑む。月光に焦げた肌の下から、覗き見えるのは星の数程の文字。夥しい称賛、与えられた言葉。飾りつけられた、繰り返す運命の。
「ずっと、私は私と別れたかった」
 ねえ知っている。幻想は、強すぎる光の前に晒されるとき、本当の幻想に戻ってしまうのよ。
 さらばと天高く伸ばされた、お伽噺の、最期の指。



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