翡翠の目をした猫ばかり飼ってきた。おかげでいつからか、夢に現れたのが何匹目のどの猫だったか、霧の中に開くまばたきを視るだけで判るようになった。ジンジャー、カルダモン、アニス、クローブ。香るものの名前ばかりつけてきたように思う。香りは愛すべきものだ。なぜなら僕には、見える目がない。
それでも翡翠の目の猫を飼った。翡翠は石で、けれど木の色、時々水の色でもあると聞いたからだ。彼らの目は世界の色をしている。その輪郭を撫でて、夢にまみえるとき、僕はこの目が確かに淡く、何かを捉えるのを感じる。
「やあ、今晩は。カルダモン」
一際利口な君の目に、今夜は何が詰まっている?
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