オレンジの飴を持つか、蜂蜜の飴を持つかで一日が変わる。キャスケット帽にブーツを履いた日は、オレンジの飴がよく似合っている。反対に、袖にフリルのついたシャツなんか着ているときには、蜂蜜の飴が綺麗に溶ける。外側をつくる洋服と、内側をつくる飴は表裏一体だ。食べる琥珀のような、透明を纏う。誰にも見せない内側にだけ。
 冬、朝の光、色を変える信号に動き出す、雑踏にオレンジの薫りが弾ける。取りこぼさないように、ブーツの裏で踏んで吸い上げながら歩いていく。オレンジはそうして、私の中を一巡する。季節を問わない来客のように、いつも爽やかで新しい。蜂蜜はいつも懐かしい。私がどちらを愛しいと思うかは、その日その日に絶えず変わるけれど、彼らは変わらない。変わらず新しかったり、懐かしかったりしながら、私の中を巡り巡って、蝋を塗るように構築していく。
 緩やかな坂道に、オレンジの足跡を色だけ残して、今日も行こう。


(靴底の春)




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