無差別に振られるサイコロが落ちる。透明の中に、泥濘の底に。幻想の裏に、目を閉じた、一瞬に。ばらばらと音を立てて落ちる。床のない空間を、跳ね回る。
「嗚呼、なんだ」
「君はまた」
「そんな遊びをしているのか」
 湾曲した声が耳の奥で響く。それは、「何もない」の底から響いてくる。真昼を蝕む有象無象。それらのほんの一部分の、偶然にも目に映せた世界から。
「嗚呼、なんだ」
「君はまた」
「そうやって我々を探すのか」
 賽の目の振り与えられた数だけ、僕にはそれが見える。そこにあってどこにもない、透明や泥濘や幻想や、君の姿が。
 ――人はそれを、白昼夢と呼ぶ。
「戻らなくなるぞ。目が」
「いいよ、別に」
「嗚呼、君はまた」
「そうやって我々を生み出すのか」
 眼前に、鮮やかな絵の具が散った。



ド・ロ・ウ





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