巡り生まれ、打ち鳴らし合う。星が消滅へ向かうように。僕たちは、物語の消費者なのだ。この造られた虚構の世界の中、与えられる試練を、運命を、愛を憧憬を悲劇を千変万化を。身に仰ぎ浴び、口を開けて、貪り尽くして生きていく。蓋の壊れた精神の腹が、満ちるのにも気づかず、破裂する日まで。戦い、進み、失い、愛し、選び、選び選び選び選び。
「さようならだ、どうしてこうなるんだろうな」
「分からないや。私も、結構頑張ったつもりだったんだけど」
「知ってる。変えられなくてごめんな」
「いいよ、大丈夫」
 どうせまたすぐに会えるから。泣かないで。どうせまたすぐに会えるから。どうせまたすぐに、あなたが私を撃ち抜くときが来るから。何度だって何度繰り返したって、それまではまた一緒にいられるから。だから。
 柔らかにしなる喉から、最後の声が漏れる。本当の最後を聞けずに、引き金を引くのは何度目だろう。何を捨てても君と出会い、何を選んでも君と別れ、何を違えても再び出会う。しがらみは震える指を捉えて、そうだ、それでいいのだと歌うように囁いた。選択、選択、選択肢のない選択。気が狂いそうだ。
「こんな願いは何度目だろう。もうこの今ここにいる僕の願いなのか、いつかの僕の願いなのか、分からなくなりそうだけれど」
 繰り返しのときが近づいている。銃口を空に向け、ガラスの蒼を砕く。雨が降る、ひどく混じり気のない透明な雨が降る。この世界の展開を、祝福するように。
「例え何度、意味のないループばかりしていたとしても。一周、また一周するごとに、僕はいつか、君をここから出せるようにと確かに願っているんだ」
 がらんどうの空に浮かんだ文字が、最終章の始まりを告げる。僕たちは、物語の消費者だ。ひとひらにも満たされない命をからがらに、終わりの見えない短さを駆ける。




[ 22/102 ][*prev] [next#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -