長い方が好きだった。貴方が言うから、ありがとうと笑って一層短く髪を切った。大人っぽくなったね。困ったように、言葉を変える。その微笑みに目を瞑る。
「前のほうが、好きだった」
「それはそれで嬉しい。ありがと」
「……今のほうが、お前らしいけど」
それでも俺はね、と。言おうとして、言いかけて、口を噤む人に私から微笑む。困ったように笑っていた。ひどく寂しいものにも見えた。
気づかないふりをして、駅を歩く。人混みの中、はぐれそうになればいつでも繋げそうに合わせた手の、上がることもなく冷めることもない体温はいつも私たちと共にある。
尚も髪を切り落とした首筋に触れる、視線に問いたい。私が貴方の愛するものになったとして、それは本当に、貴方の望みなのだろうかと。
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