熱い吐息が漏れる。苦しい程の愛の証があたしの中で暴れて、悶えるような甘い声が薄暗い部屋に響く。
「っあ、やあ…」
首筋に落とされた幾つもの赤いキスマーク。それをまたなぞるように、おさげを揺らす乱馬が舐めた。
厚い胸板と、握った大きな手。絡めた舌が熱くて、頭が痺れて涙が溢れた。一心不乱にお互いの存在を確かめるようにあたし達は抱き合った。
自分達の行為が、正しいのか愚かしいのか、それさえも確かめる術は無くて無我夢中に相手を求めた。この時だけは、お互いに箍が外れたように、普段口にしない言葉を口にした。
好きだと、愛してると、彼が耳元で囁いてあたしがそれに頷く。ぞくぞくするような快楽に溺れて沈んでしまいそうだ。そうだ、あたしはカナヅチだった。
「あ、かね…っ、やば」
「んっ、抜か…ないで」
「それは…っ」
まずい、と言うか言わないかのタイミングで、あたしの体内に降り注いだ彼の熱い体液に酷く安心したのを覚えてる。
脱力したかのように、あたしの体にもたれかかった乱馬のおさげを指に絡み付けた。あ、枝毛。握りしめたもう片方の手が、じんわり汗ばんでいてそれが自分のか彼のかなんてわからなかった。
ふ、と視線が交わって乱馬があたしの唇にキスをした。
「わりぃ、疲れた?」
「ううん、大丈夫よ」
「…じゃあ、さ」
何度も何度も響くリップ音が、そのうち厭らしい水音に変わる。酸欠になりそうな程貪るように舌を絡めて、のぼせるような感覚にくらくらした。
「もう一回、」
「……えっち」
溺れるような快楽と、目をまわす程の熱気に包まれてまるで呼吸の出来ない魚みたいだ。陸におりた幸せと、息苦しさとがごちゃまぜになって、まるで自分が人魚姫にでもなったかのような錯覚に襲われる。今日の好きが、明日にはもっと好きになってまた苦しくなるんだろう。ある意味幸せ。
「…っ…あかね、愛してる」
ほら、今日もまた
こうして溺れてく。
END.