お題3 | ナノ



「ごはんできたよ!」
「…え、これが朝ごはんですか」

この台詞の10分後、滅茶苦茶大喧嘩した。



朝ごはんでもなんでも食べることの出来る鬼灯さんに、私がどうしても食べたかったオムライスを朝から作って出したのがきっかけ。
夢に見て起きてどうしてもらべたかったオムライス、卵がふんわりトローッとライスを包むそれ。
肉はチキンじゃなくて合い挽き肉、ソースやコンソメベースの味付けにタマネギたっぷりで卵の上にはケチャップ。
サラダはカリカリベーコンとクルトンを載せたやつで、ドレッシングは3種類ほど置いておき好きなのをどうぞ形式。
やっぱりそれにはスープもということでオニオンスープ。
どうぞと満面の笑みで出したそれを見て鬼灯さんはちょっと嫌そうな表情になり、私は「え、嫌なの?」と言ってしまい、

「今朝はこういう気分じゃなかったです。白米と味噌汁と魚の気分でした」
と嫌そうに言われ。

「じゃあいいよ、食べなくていいから。外で食べたらいいじゃん」
と言って鬼灯さんの背中を押して外に追い出して外で言い争いに発展し、近所の人が覗き出したところで鬼灯さんは口を閉ざして歩き去った。
私は一人でオムライスを食べてスープとサラダを平らげ、鬼灯さんの食べなかった分を弁当箱やスープジャーに詰めて本日のお昼用に持って出かけることとなった。


こういう時に気まずいのが同じ所に勤めているということ。
そしてそんな時にばかりすれ違ったり用事があったりするということ。
渋々顔を合わせればあからさまに「つーん」とか言われて顔を背けられたり、知らんぷりをされたりするが仕事が絡むことは渋々だがぶっきらぼうに伝えられる。
イライラしたので私もその後はあからさまに無視したり遠回りして合わないようにしたりして、徹底的に鬼灯さんを遠ざけた。


昼休み、同僚とお弁当を食べていると
「一口頂戴、この唐揚げとトレード!」
という同僚とお弁当交換をしているのを鬼灯さんが遅れて食堂に入ってきて目撃して、なにか文句を言いたげにこっちに来ようとして、途中で引き返して定食を頼んでいるのが見えた。

そしてピリピリした空気を発しながら物凄い形相でお昼を食べているのを、皆が遠巻きにビクビクしながら見つめていて、それより遅く食堂に来た大王が鬼灯さんを見つけて

「なーになんだか機嫌悪いねぇ。食べたいの売り切れだったの?」
と呑気に声を掛けて金棒で一閃されていた。
(「君官吏なんだからもっと周りのこと考えて落ち着かなくっちゃ」「今は休憩時間ですからそんなこと考える必要ないです」「で、何が食べたかったの?」「…オムライスです」「そっかー、それは残念だったねえ、美味しいよね、卵がとろーって上に載ってるの」「はい、私は包んであるほうが好みだったのですが、どうしても載ってる方が食べたくて」「夕飯に食べたらいいよ」「…そう、ですね」)
「大王ってどんな状態の鬼灯様相手にも変わらないよね」
「うん、究極の癒し系だよね」
怖い方のはずなのにねという同僚にそうだよねと相槌を打てば、同僚は で?と私に箸の先を向けてきた。
やめてお行儀悪いよ!

「で、菜々子は鬼灯様と喧嘩でもしてるの?」
「そうなんだよ、朝にね!…やっぱり良い。今は言えない。(地獄耳だから聞かれるかもしれないし」
「なにそれ気になる!」
同僚とご飯を食べ終え、お弁当箱を仕舞いこんで立ち上がると鬼灯さんがちらっとこっちを見ていたように見えたが多分気のせいだろう。


午後からも徹底的に鬼灯さんを避け続けたので遭遇することはなかった。
しかし今日一日閻魔殿全体が微妙にピリピリして感じるのは私が鬼灯さんと喧嘩しているからかな。
帰るのちょっと嫌だな、夕飯何にしようかな。
明日の朝食は仕方がないから御飯と味噌汁と魚にしてあげようかな。
ああ、夕飯何にしようかな。朝と昼でオムライス食べたからあっさりした蕎麦とかにしようかなあ…なんて考えながら、本日の業務を終えた。

家に帰りお風呂で汗を流し夕飯の支度をしているといつもより随分と早く鬼灯さんの帰宅する音が聞こえた。
火を使っているので出迎える必要はないと無視を決め込んでいると、鬼灯さんがズカズカと足音を鳴らして台所へ来て、後ろからぎゅっと抱きついてきた。

「朝はすみません菜々子さん、我儘言いました」
珍しくも謝ってきた鬼灯さんに驚いて身動ぎできずにいると、肩辺りを抱きしめていた手が下がってお腹の辺りでクロスする。
そして私の肩に顎先を乗せて甘えるように頬をくっつけてきたのでここで意地を張っても仕方がないと思い、私もごめんねと謝った。

「オムライス、昼に持ってきて食べてしまったんですね。ひょっとしたら冷蔵庫にあるんじゃないかと一度帰って来たらなくなっていたし、菜々子さんを食堂で見かけた時に食べているのを目にしたらもうなんだかとても悔しくなりまして」
「あ、そっか。ごめんね…」
声がボソボソと小さく、耳に唇が当たるのが擽ったい。
身を捩ろうとしたら身動きできないくらいに力を込められたので大人しくしていることにした。

「また、食べたいです。流石に今からは無理だと思うので、出来れば明日明後日くらいには」
朝食にして頂いても構いません、と言われたのでこくんと頷いて鬼灯さんの顔の方に自分の顔を傾けて、唇に態と顔をくっつけるようにしたら鬼灯さんがはむはむと私のほっぺたを唇で喰んできたので擽ったいと言って笑ったら、鬼灯さんが更に喰んできたので私も掴んていた菜箸を置いて身を捩り鬼灯さんの体に抱きついて撫で回した。



「菜々子さん、私はコロッケは完全にマッシュしたもののほうが好きなんです」
「だって私はおいもゴロゴロのほうが好きなんだもん」
仲直りして翌日、閻魔殿の空気はいつもどおりに戻った。
そしてお昼を一緒に食べようとお弁当を取り出して鬼灯さんに渡したら、一口コロッケを齧った感想がそれだった。
そして言い争うとどんどん空気が悪くなり、先日みたいなことになって来て慌てて極卒御一行様方に止められ宥め賺されて。

「コロッケなんて美味しく食べれればどっちだっていいじゃないですか!うちの嫁のコロッケなんて!焦げて爆発してるのに中は生でジャリジャリしてるしお腹壊すんですよ…!」
そう言って泣きだした男獄卒に男泣きされて、美味いは正義だと諭されて喧嘩は霧散したのだった。
(「確かにそうですね、美味いは正義です」「もう喧嘩するのやだ」「そうですね、美味しい物作ってもらってるのに我儘言いました。すみません」「喧嘩しないでいいように、もうお弁当作らない」「?!」「あれ、イヤ?」「嫌ですよ!菜々子さんの作るものを食べるのが私の幸せです!」「分かった。じゃあ喧嘩しないように食べようね」「どうしても嫌なものだけ、書き出しておきます」)
おわり
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好きな食べ物でも形状が少し違うとあれれってなるよねえ。
後は気分とか。
私は寝起きすぐ(苦手な物じゃなければ)なんでも食べます。カレーでもラーメンでも、起きてすぐ食べられます(キリッ!




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