お題3 | ナノ



どちらかと言うと私は地味な方だ。いや、言い切ろう。地味だ。
色々な化粧品がある中、いつもほぼ固定で同じものばかりを使っていつも同じ顔をしていたのだが、ひょんなことから化粧品一式を頂いて流行メイクの本を頂いてから私のメイク事情はガラリと変わった。

顔が変われば髪型も気になるもので、髪も少し値の張るところで綺麗に切ってもらったら次は着物が気になった。

地味で代わり映えしないそれを流行を取り入れた、でも品のいい着物に一新してみた。
鏡にいたのはもう誰だか分からないほどに変わった私が映っていた。

「うわ、すご」
基本的なものは全く変わらないというのに、色味が変わるとこんなにも違うものかと驚愕する。
嬉しくてそのまま出掛けてみれば、驚くほどに異性から声を掛けられた。


「え、菜々子?!」
「うん、驚いた??」
ナンパとか滅多にされない私としては嬉しくて楽しくておかしくなってお香ちゃんのところに話しかけに行って驚かれ、鬼灯様のところに行って目を見開かれ、蓬に会ってスルーされかけて話しかけて仰天され、アワアワしている蓬のうしろからひょっこり出てきた烏頭と会って烏頭が目を擦って二度見した。

「似合うかなーへへー」
「お、おう似合うんじゃね?」
ここでデキる女子は色々と仕掛けるんだろうけど流石に地味脱出したところの私では何も出来なかった。
取り敢えず色々話しかけられて、明日デートに誘われたんだと自慢したら烏頭がなんだか変な顔になった。

「ふーん、デートねぇ」
「あ、信じてないな!」
唇を尖らせてそっぽを向く烏頭に回りこんで本当だと訴えたら烏頭はまたぐるっとそっぽを向いた。
むかっとしてもう良い烏頭に話してあげない、と踵を返した私に、烏頭は私の新調した着物の袂を摘んで引っ張って。

「信じてないんじゃなくて、そういうの誘われたら行くのかと思ったらムカついただけ」
って言われて、なんで烏頭がムカつくんだかと私は首をひねった。

烏頭はこっちを向いて、珍しく真面目な顔で私をじいっと見下ろしてきて。

「これ以上、可愛くなるなよ。」
ぼそっと呟いて、私の綺麗に塗られた口紅を親指で軽く辿った。
「えっ、あっ?!」
「俺以外が菜々子が可愛いって知らなくてもいいんだっつの」
挙動不審になった私に、更に烏頭がボソボソと囁いてくるのがすごい言葉過ぎて頭がついていかない。
オロオロし続ける私を他所に、烏頭は指先についた紅を人差し指と擦り合わせて薄くしてからゴシゴシと自分の腰辺りの布で拭い、そのあとガシッと私の顔を掴んで。

「明日、行くなよ…」
少し情けない顔で私を見つめてきたので、思わず頷いてしまった。
それを見て安心したらしい烏頭があからさまに顔色を明るくし、大きく息を吐きだしてから私の顔を自分の胸元に押し付けてきたのでこちらは予想外過ぎて抗うことも出来ずにぼすんと烏頭の胸元に顔を埋めることになってしまった。

「デートならさ、俺としろ。な?」
あやすように背をトントンされて、私の心臓は破裂しそうになる。
デート、っていうか烏頭と出かけることは幼馴染だからかすごく多いけど…よく考えたらお香ちゃんと出かけるのの次くらいに多いことを思い返してあれ、ひょっとして烏頭って私の事好きなんじゃないのか?なんて自惚れてしまった。

だがしかし自惚れではなくそれは事実だったらしく。
その日以降熱烈にアプローチをしてくる烏頭に、私はあっさりと陥落したのだった。
(「菜々子、デートしようぜ!飯食いに行こ」「って食堂にお昼食べに行くんでしょ」「立派なデートだ!その後一緒に血の池デートな」「メンテでしょ」「いいんだって、デート!」「理屈が滅茶苦茶過ぎる」「でもなんだかんだ言って菜々子付き合ってくれるもんな!だから大好きだ」「ちょ、うわあああ!」「あ、待て菜々子逃げんな!」「あの2人ラブラブね」とお香ちゃんと蓬と鬼灯様がヒソヒソしていることには全く気が付かないのだった)
おわり
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メイクのうまい人が羨ましくて仕方がない(´・ω・`)
詐欺写メとかメイクとか誰か私に施してください(´・ω・`)
メイク前後の顔が全く変わりませんよ(;´д`)トホホ…




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