お題3 | ナノ



親友とまではいかない間柄の、長く付き合いのある友人が結婚することになった。
その相手が私が結構長く気にしてきた相手で、付き合いそうになった時期もあったがタイミングが悪く、仕事が楽しくて恋人なんていらなーいという時期に私がスルーして立ち消えたのだ。
その状態でその友人が加わり、一緒に遊んだりしているうちにいつしか…という感じで付き合いだして結婚に至ったらしい。

「あの頃に戻ったら…今頃横にいたのは私だったのかもしれないんだよねぇ」
出席のハガキに丸をつけつつ、そんなことを考えては溜息。
何を言っても今があるのは過去の流れがあったからで、今更そんなものは変えられないというのに私ったら少し未練がましい。

はぁーと大きくため息を吐き出していると、ひょいとハガキが手から抜けて浮いた。
何だなんだと見てみれば、そこにいたのは鬼灯で。

「ご友人の結婚式ですか。…そういえば私のところにも来てましたねえこの葉書」
私の丸をつけているところを見た後に差出人を見て返事忘れてました、と反対の手で自分の頭を軽くぺしんと叩いていた。

「鬼灯も出るの?」
「そうですねえ、菜々子が出るのならなんとか都合をつけましょう」
忙しい地獄の官吏様だから、電報だけとかご祝儀だけとかもあり得るなと思ったが鬼灯はどうやら出るようだ。
私も一人でも知り合いが多いほうが嬉しいので純粋に良かったと思ってそういえば、鬼灯は菜々子さんは絶対に出てくださいよと念を押した。

「私は…でないとねぇ…。未練がありありなんだけどさ。吹っ切らないと駄目だしね」
「そうですね、しっかり吹っ切って前を向いて下さい。男も女も星の数ですよ」
ここにも男も女も居ますよ、偶然ですねと私を笑わせようとしているらしい鬼灯の心遣いになんだか嬉しくなった。
隣にいることが自然すぎて気にもしたことがなかったが、そうだよねえ、鬼灯だって男だし私は女だ。

後悔先に立たず、覆水盆に返らず。
こうなったらきっちり吹っ切って、私を見てくれる誰かを見つけて幸せになるように頑張ろう!と思い至ったので鬼灯にお礼を言うと、「はてなんの事でしょう?」と首をコテンと傾けられた。

「隣の芝は青いって言うしね」
そう言い切ってしまうとなんだか心が物凄く軽くなった。
きっと私の今の感情はそういうことなんだ、無い物強請りみたいな。
ああしたら良かったこうしたら良かったなんて思わずに選り取り見取りだと思って色々なところに言ったりであったりして楽しもう、と鬼灯のコテンと倒れている頭を真っ直ぐに直してやった。

「そうですよ、隣の芝から見たらこちらは花園に見えているかもしれませんよ」
意味ありげに言って、私の頭を撫でる鬼灯に何だそりゃ、と思ったけどひょっとしたらそういうこともあるかもしれない。
青い芝よりも素敵な花園にするために、私の頭の上に手を置く鬼灯の手を掴んで離させて、にっこり笑ってやったのだった。
(「式まで3ヶ月ありますから、菜々子さんその時彼氏同伴状態かもしれませんよ」「招待されてない彼氏は連れていけないでしょ」「招待されている人かもしれないじゃないですか」「あはは、だったら楽しいね!」「楽しいですよ、私とかいかがですか」「あははなにそれ!鬼灯ってそういう冗談も言うんだね!」「冗談じゃないのですが」「はっくしょん!…え、なんか言った?」「…いえ何でも。さあ菜々子さん毎日楽しみましょう」「はーい」)
おわり
---------------

たらればなんて、過ぎたらほんと意味ないし
上を見てもきりがないので、程々の幸せを感じられたらすごく楽しくなれると思うよ(*゚∀゚)




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -