とりあえず、この子は自分が鬼だと気づいているのかな?
水明は続けて質問する。
「君は鬼の子かい?」
「鬼の子・・・?」
「その一本角は鬼の証拠さ」
「鬼・・・」
恐る恐る小さな手で自分の額辺りを触る少年。
角の先端に触れた途端、彼はビクリと肩を震わすと少しだけ目を見開き驚いていた。
そして触れた手と見えない己の額を交互に何度も見つめ見上げる。
その様子に水明は思わず笑ってしまった。
「くく、何だい、気づいてなかったのかい?」
「死んだあと私の身体に鬼火が宿ったんです。だから人間でないことは分かっていたんですが・・・」
笑われたことが恥ずかしかったのだろうか、不満そうに口をすぼめた少年。
その仕草も幼少ならでは、だ。
可愛いな、なんて場違いな感情を抱きつつ水明は少年に素直に謝った。
「申し訳ない。ただ本当に驚いていたからな、つい笑ってしまった」
「・・・・」
「悪かったよ。」
「怒ってないです」
どうやら見た目によらず随分大人びた子供のようだ。
「私は本当に鬼になったのですか?」
「見た目なら。気になるなら後で鏡で確認したらいい、君はもう立派な"人外"だろう」
「・・・・」
水明の言葉に複雑そうに眉をひそめる少年。
ああ、これ以上は詮索しない方がいい。
彼の事情を何となく汲みとった水明は話題を変えてみることに。
そもそも、基本的な事を聞いてなかったな。
「名前は?」
「丁といいます」
「"ちょう"・・・?」
繰り返された自分の名前に丁という男の子は地面の砂に指で"丁"となぞった。
眉をひそめる水明。
「それ・・・召使って意味でしょ」
「そうですね、現に私はそうでした」
「やめやめ!んな名前、名前じゃないよ。」
「・・・・え」
「・・・・何よ」
予想外の反応だったのか、それとも今まで水明のような反応は初めてだったのか。
恐らく双方だったのだろう。
自分を動かすためだけに使われていた名前。それを今この瞬間、目の前にいる初めて会った少女に否定されたのだ。
雷に打たれたような、呆気にとられたような不思議な表情になる丁。
そんな彼に 辛気臭いなぁ、と水明は軽く一蹴した。
「何だ鳩が豆鉄砲喰らったような反応は」
「・・っ何も」
「君だって"丁"の意味くらい知っているだろう?それは君の名前であるが存在を示す名前に相応しくない」
「っ」
「どうせなら私がお前の名前を決めて進ぜよう、というわけだよ、少年。」
ニヤリと満足そうに笑う彼女に懐疑の眼を向ける丁。
「・・・・・貴女何様ですか」
「おぅ・・・君なかなか辛口だねぇ・・・まぁ"元"巫女様のお言葉なんだから素直に受け取りなさいな」
「はぁ・・・」それでも半信半疑のようだ。
しかし、そんな彼の態度などどこ吹く風。水明は頭の中で"ちょう"と何度も繰り返した。
「"丁"・・・ちょう・・・どうせなら"ひのと"はどうよ?」
「ひのと」初めて聞いた単語だ。
「字は丁からとったけど読みが違う。それにひのとは"火の弟"って意味がある」
諭すような彼女の声は穏やかで優しい。
「 どうせ人は音でしか名前を聞かないんだ、」
その言葉に、少年の瞳に一筋の光が射した。
水明は続けて質問する。
「君は鬼の子かい?」
「鬼の子・・・?」
「その一本角は鬼の証拠さ」
「鬼・・・」
恐る恐る小さな手で自分の額辺りを触る少年。
角の先端に触れた途端、彼はビクリと肩を震わすと少しだけ目を見開き驚いていた。
そして触れた手と見えない己の額を交互に何度も見つめ見上げる。
その様子に水明は思わず笑ってしまった。
「くく、何だい、気づいてなかったのかい?」
「死んだあと私の身体に鬼火が宿ったんです。だから人間でないことは分かっていたんですが・・・」
笑われたことが恥ずかしかったのだろうか、不満そうに口をすぼめた少年。
その仕草も幼少ならでは、だ。
可愛いな、なんて場違いな感情を抱きつつ水明は少年に素直に謝った。
「申し訳ない。ただ本当に驚いていたからな、つい笑ってしまった」
「・・・・」
「悪かったよ。」
「怒ってないです」
どうやら見た目によらず随分大人びた子供のようだ。
「私は本当に鬼になったのですか?」
「見た目なら。気になるなら後で鏡で確認したらいい、君はもう立派な"人外"だろう」
「・・・・」
水明の言葉に複雑そうに眉をひそめる少年。
ああ、これ以上は詮索しない方がいい。
彼の事情を何となく汲みとった水明は話題を変えてみることに。
そもそも、基本的な事を聞いてなかったな。
「名前は?」
「丁といいます」
「"ちょう"・・・?」
繰り返された自分の名前に丁という男の子は地面の砂に指で"丁"となぞった。
眉をひそめる水明。
「それ・・・召使って意味でしょ」
「そうですね、現に私はそうでした」
「やめやめ!んな名前、名前じゃないよ。」
「・・・・え」
「・・・・何よ」
予想外の反応だったのか、それとも今まで水明のような反応は初めてだったのか。
恐らく双方だったのだろう。
自分を動かすためだけに使われていた名前。それを今この瞬間、目の前にいる初めて会った少女に否定されたのだ。
雷に打たれたような、呆気にとられたような不思議な表情になる丁。
そんな彼に 辛気臭いなぁ、と水明は軽く一蹴した。
「何だ鳩が豆鉄砲喰らったような反応は」
「・・っ何も」
「君だって"丁"の意味くらい知っているだろう?それは君の名前であるが存在を示す名前に相応しくない」
「っ」
「どうせなら私がお前の名前を決めて進ぜよう、というわけだよ、少年。」
ニヤリと満足そうに笑う彼女に懐疑の眼を向ける丁。
「・・・・・貴女何様ですか」
「おぅ・・・君なかなか辛口だねぇ・・・まぁ"元"巫女様のお言葉なんだから素直に受け取りなさいな」
「はぁ・・・」それでも半信半疑のようだ。
しかし、そんな彼の態度などどこ吹く風。水明は頭の中で"ちょう"と何度も繰り返した。
「"丁"・・・ちょう・・・どうせなら"ひのと"はどうよ?」
「ひのと」初めて聞いた単語だ。
「字は丁からとったけど読みが違う。それにひのとは"火の弟"って意味がある」
諭すような彼女の声は穏やかで優しい。
「 どうせ人は音でしか名前を聞かないんだ、」
その言葉に、少年の瞳に一筋の光が射した。