切ないくせに想いは甘くて。「あ、鬼灯様ぁ」 視察だかなんだかで現れた鬼灯を見て、菜々子はふらりとよろける。 普段ならさっと受け止めるであろう鬼灯はちらりと見ただけで放置だったため、菜々子は蹈鞴を踏んでゆっくりと転がった。 「クラクラします!」 この間も寝込んで大変でした!という菜々子に鬼灯はため息を吐き 「普段からダイエットだなんだとしっかりと運動をして栄養を取らないからです」 とつれない言葉でさらりと返した。 菜々子はそれを聞き、いやいやと首を振り地面で横座りをしたまま鬼灯を見上げて口を開く。 「とってます!おかわりもします」 「では食べ過ぎなんじゃないですか」 胃にものが入りすぎて身体に血が回らなくなっているんでしょうと答えれば、菜々子はまたイヤイヤと首を振る。 「ちゃんと腹八分目です」 「では腹でもだして寝てるんでしょう」 力説する菜々子を見て、鬼灯は次の可能性を口にするが、これも菜々子は首を振って答えていく。 「お布団毛布も被ってます!」 「夜中に暑くて蹴ってるんでしょう」 しっかり食べてしっかり眠る。 そしてハキハキと答えている、これの何処が病弱をアピールできのかと鬼灯よりも周りの方が首を傾げてしまうほど。 もう毎度毎度のやりとりに、それを見る獄卒も亡者も他所でやれよと言いかけては口を閉ざすのだった。 「他にもあんなこんな!」 「更年期じゃないですか?」 「違います!!まだまだ女盛りはこれからです!」 結局のところ、鬼灯に甘やかしてもらいたいし甘えたいという菜々子の願望丸出しの行動なのだ。 付き合ったりしているわけではないので甘えるにも限度があるため、毎回こうして病弱アピールで抱きとめて欲しいし心配して欲しい。 もっと言うなら看病とかもしてもらいたい、という菜々子の気持ちに鬼灯が気がついているのは菜々子以外の者全員で、毎回つれなくされて切ないくせに想いは甘くて。 さっさとくっつくなり何なりして本気で他所でやってくれと思う極卒たちはそろりとその場から離れて遠巻きに自分たちの仕事に励んでいる。 何度目かのため息を吐き出し、鬼灯はしゃがみこんで菜々子を呆れた表情で見つめて。 「で、どうされますか。このまま転がっていますか。毎回私の気を引こうとアピールし続けますか。それとも私に告白でもしてみますか」 「え」 ほらさっさと選びなさい、という鬼灯に、菜々子は目を見開いてアワアワする。 心を決めて告白するまでおよそ3分、だが断るという鬼灯の返事はその5秒後で、落ち込んだ菜々子が本気で寝込んでしまいそれを耳にした鬼灯が看病すると押しかけてからの 「あなたは本当に手がかかる。私以外に受け入れる誰かなんて居ないでしょうから付き合ってあげますよ」 と言うひねくれた告白を聞いて、菜々子は嬉しさで暫く寝込み続けるのだった。 (「なんで一回断っておいてこんな」「すぐOKするよりも焦らしたほうが楽しいでしょう。前戯は嫌になるほどねちこくが原則です」「楽しくないです」「おや今の状態は嫌ですか」「嫌じゃないけど複雑です」「というかこんな事で寝こむだなんて菜々子さん結構メンタル豆腐ですね」「乙女はか弱いんです」「鍛えなおして差し上げましょう、毎晩しごきます」「目が怖い!」) おわり --------------- 告白してふられて告白されるっていうのは素敵かなと思ったんですが あんまりどころか全然素敵じゃなかった… コンビニで文才と画才売ってませんかね(´・ω・`) |