おだい | ナノ

一番好きな色をあげたい。


「おや菜々子さん、いいものを持ってらっしゃいますね」
お香さんにいただいた金平糖を摘んでいると、鬼灯様が近寄ってきてじいと手元を覗きこんできた。

「鬼灯様もお一ついかがですか?」
金平糖の入っている袋を差し出すと、右手に金棒と風呂敷包み、左手に書類を束で持っているのを見せつけられて。

「両手が塞がっています。口にひとつ放り込んでいただけますか?」
あー、大きく口を開けて、鬼灯様は私をじいと見つめる。
たしかにこれでは食べられないか、と私は金平糖の袋に手を突っ込んだ。
ひんやり冷たい金平糖が手に、指にあたっては雪崩れていく。
そこでふと思った。鬼灯様は何色のが好きなんだろう。
どうせなら一番好きな色をあげたい。

「どの色がいいですか?」
見上げて言えば、口をあけっぱなしのままの鬼灯様が一度口を閉じて、うーんと首を傾けて。

「では、菜々子さんの一番好きな色をお願いします」
再びあーんと開かれた、いつもは小さくしか開けられない口。
牙がキラリと光って、早くと急かされているように見えた。


「では、これで」
そろりと口元に持っていった金平糖は桃色。
春に咲く花の優しい色。

口に触れないようにと細心の注意を払ったけど、ぱくりと金平糖ごと食べられた指。
歯で軽く噛まれて、びっくりして指を抜き取ったらその隙間からころりと金平糖も転がり出てきてしまった。

「あ」
「ああ、出てしまいましたね。もう一ついただいてもいいですか?」
勿体無いことをしてしまってすみません、と謝られて、もう一度口を開けられて。
少し濡れた震える指先で、新しい金平糖を摘んで鬼灯様の口へと差し出した。

指先で弾いて、口の中へ。

噛み付くように口を閉じた鬼灯様が少し眉根を寄せて、残念、と呟いて頬を金平糖で膨らませて去っていった。

去りゆく逆さ鬼灯を見守りながら、食まれた指先がどくんどくんと、まるで心臓がそこにあるみたいに脈打って。
真っ赤になった顔で、指先を撫でつつ鬼灯様の口から転がり落ちた金平糖を、どうやって拾おうかと悩んだのだった。
(紙で包んで、は何か汚いものみたいで嫌だけど、素手でなんて、ほ、鬼灯様の口に入った金平糖を?!)
(二回目は食みそこねた。次は一緒にその指 舐(ねぶ)ってやろうか)
おわり
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舐るってなんかやらしいな!(*´Д`)ハァハァ
金平糖かわいいよね〜すんごく美味しいけどすんごく高いってやつ、食べてみたいわ。
鬼灯様からあーんされたら天国行けそう。(地獄の鬼だけど


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