「目を開けて下さい、そんなに固く閉じないで」
「何とか言って下さい」
「目を開けて下さい!!」
固く目と口を閉ざし、一言も発しない彼女の頭を膝に乗せて軽く揺さぶる。
一向に変わらないその状態に、体を揺さぶるが意味を成さなかった。
「目を開けてくださいって、こんなに言ってるというのに」
今までと違う、少し優しい口調でそう言って彼女の頬を優しくなでた。
白い頬は一層白く、まるで人形のようだ。
「いい加減にしろ」
優しく優しく撫でていた手で頬を抓りあげてやったら、いたっ!という小さな声がして、うすーくうすーく瞼が開かれたので、その隙にさっと目薬をさしてやったらひやあああと悲鳴をあげられた。
「しみるしみる、痛い怖い!」
「我慢する、はい反対開けて」
「やだー怖い!」
またも固く閉ざした瞼、これでは目薬がさせないともう一度抓りあげたが瞼は頑として開かなかったので、押してダメなら引いてみろ、ではないが、北風と太陽方式を取ることにした。
ちゅ、と軽く瞼に吸い付くキスを落とせば、驚きで目が限界まで開かれた、まんまるだ。
それ今だと目薬を指せば、先程と同じリアクションが返ってきたのは少し笑えた。
「痛い、しみる!目に液体がボトッて、怖かった!」
「はいはい、もう終わったから怖くないでしょう」
「怖かった!」
「目薬ささないで酷くなるよりマシでしょう。ほらもう泣かない」
それ以上泣いたらもう一度目薬ですよと言ったらぴたっと止まった。
「そんなに怖いですかねえ」
こんなものが怖いだなんて、と彼女が普段やっている仕事内容を思い浮かべたがそういうのとはレベルが違うのと癇癪を起こされた。
こんな目薬が怖いだなんて、と呆れる反面、そういう弱点を知っているのが自分だけだというのがちょっと優越感を覚えさせられる。
スンスン言いながらうずくまっている彼女を見て、また差してあげますねと言ったら小さな小さな声で
「お願いします…」
と呟かれて、今すぐさしてやろうかと思うほど萌えたのは…彼女には秘密、だ。