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「あにうえ・・・」
突然、思考を遮られてビクッと肩を弾ませる。
「っ・・・アマイモンか」
お揃いの浴衣を肌蹴させ、寝ぼけ眼の弟の登場に、ふと時計をみると、ちょうどお昼前であった。
「腹がすきました」
ぐぎゅぎゅるるぅ・・・
確かに、腹が減っているようだ。
しかし。
「アマイモン、起きて一言目が腹減った、か?・・・私は悲しいぞ」
こう、昨日のことを思い出して赤くなるとかー。腰痛そうにしてるとかー。もっと欲しくて潤んだ瞳で上目遣いとかー。
いろいろあると思うのだが。
こいつは欲求のはじめに食欲が来ているからな。
部下を呼ぶ。
「失礼いたします。御用でございますか」
頭を下げた後、私の顔をチラリとみる。
「本日のランチは如何いたしましょう」
どうやら表情だけで私の考えを汲んだらしい。
「あぁ。今日はフレンチにしよう」
「はい、かしこまりました」
部下が体を反転させた。
部屋を出る一瞬、何故か天井を見上げる。
「何だ」
「いえ」
何もいわずそのまま部屋を出て行った。
がさがさ・・もしゃもしゃもしゃ・・。
「あいつ・・・気づいてますね」
「アマイモン、カーペットに食べ物を撒き散らすんじゃない」
部下が出て行き、すぐに天井裏から逆さまの状態で、アマイモンが顔をだす。
手にはカ●ビーの●ールを持っている。
昼食を待ちきれなかったのだろう。
フレンチは、選択を誤ったでしょうか。
いつのまにか着せてやった浴衣ではなく、いつものゴシックな服装へ着替えていた。
「おい、浴衣はどうした・・・って、食べ終わった袋を投げ捨てるんじゃないっ!」
「あれはスースーして気持ち悪いです」
しゅんとしながら袋を拾い上げるアマイモン。
「私とお揃いでもか?」
お揃い、という言葉にピクリと一瞬固まる。
「・・・寝るときだけにします」
ん?
少し、耳が赤い。
「・・・・」
薄く笑う。
本当に、可愛いな・・・。
「アマイモン」
「はい」
アマイモンがこちらを向く。
お菓子のカスが頬についていた。
「ついてるぞ」
そういって弟の顎を掴み、頬を舐めてやる。
「―――ぁっ!!?」
驚きのあまり目を見開いたまま硬直するアマイモン。
だが、すぐに顔に紅が刺し、ゆでだこ状態になってしまった。
困ったように眉根を寄せ、目を伏せるその様に、嗜虐心がそそられる。
「お前、いつからそんな表情するようになった」
囁く声にビクッと肩を弾ませる。
「し、知りません・・・」
「ほぅ?知らない、と。まさか私の知らないところで・・・」
「そんなことっ!」
真剣な顔でアマイモンが叫ぶ。
「・・・そんなこと、ないです。・・あ、兄上以外とあんな・・・こと・・」
そんな彼が愛おしくて。
「当たり前だ。お前は私のものなのだから」
ぎゅっと抱きしめる。
「ぁ・・・・。兄上・・」
ポロリと、手に持っていた袋を落としてしまう。
彼も、おずおずと私の体に手を回す。
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Bkmする