翌日。

燐が目を覚ますと。




「・・・ぎゃーっ!!」



目の前に雪男の顔があった。
燐が絶叫し,飛び起きる。


ゴツっと鈍い音とともに額に激痛が走る。

起き上がるときに互いの額が衝突したようだ。


それでも,慌てて壁に貼りつく燐。



「―――っ。いきなり大声出して頭突きはないだろ,兄さん」



赤くなった額を押さえながら雪男が顔を顰める。


「お,お,お前が悪いんだよっ!起きたら,お前の顔面どアップだったんだぞ!?びっくりしたぁ・・・」


そんな燐に雪男が優しく笑いかける。


「なに,僕のことそんなに意識してくれてるの?嬉しいな。でも,ちょっとタイミング悪いよ。あとちょっとで目覚めのキスを・・・」

「おいっ!!?なに人の寝込みを襲おうとしてんだよ!??」

「そんな,大げさな。昔はよくやってただろ」

「それはクソジジィがだろ!しかも幼稚園のとき!」

「神父さんの真似をして一時期僕もやってたんだよ」



もっとも,兄に気づかれないよう,そっと口付けただけだったが。



「んなっ・・おまえ・・」


さらっと暴露した弟に燐の目が見開かれる。


「そんなことより」


雪男はにっこり笑う。



「兄さん,時間・・・大丈夫??」

「え」


恐る恐る時計を見ると。


朝のHRまであと15分。
家から学校まで走って5分。


一瞬固まる燐に雪男が笑う。


「ははっ、兄さん、その顔最高だ」

「ちょ,ま,お前っ・・もっと早く起こせよっ!!このホクロ眼鏡っ!」




そういうとわぁわぁ言いながら、雪男の目の前でぽんぽんと服を脱ぎ始める。


雪男がじっと見つめていると。



「な,なに見てんだよっ!あっちいけ!」


いつもなら気にしない燐であったが、昨日あんなことがあったばかりで、雪男のことを意識しないわけがなかった。


顔を赤くしながら,シッシッと手を振る。
ふと、気づいたように燐の顔がいつものそれに戻る。



「・・・というか,お前は学校行かなくていいのか?」


いつもならとっくに登校してる時間だろ,と燐が言う。


「あぁ。今日から兄さんと一緒に登校することにしたから」


昨日はあんまり眠れなかったみたいだから起こせなくって,と雪男が困ったように笑う。


「そうなのか・・・。い,いや!だからって2人で遅刻したら意味ないだろ!?」

「そうだね」



はは、と雪男が笑う。


い、いったいこいつは何を考えてやがるんだ。




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