肆
††††††††††††††††翌日。
燐が目を覚ますと。
「・・・ぎゃーっ!!」
目の前に雪男の顔があった。
燐が絶叫し,飛び起きる。
ゴツっと鈍い音とともに額に激痛が走る。
起き上がるときに互いの額が衝突したようだ。
それでも,慌てて壁に貼りつく燐。
「―――っ。いきなり大声出して頭突きはないだろ,兄さん」
赤くなった額を押さえながら雪男が顔を顰める。
「お,お,お前が悪いんだよっ!起きたら,お前の顔面どアップだったんだぞ!?びっくりしたぁ・・・」
そんな燐に雪男が優しく笑いかける。
「なに,僕のことそんなに意識してくれてるの?嬉しいな。でも,ちょっとタイミング悪いよ。あとちょっとで目覚めのキスを・・・」
「おいっ!!?なに人の寝込みを襲おうとしてんだよ!??」
「そんな,大げさな。昔はよくやってただろ」
「それはクソジジィがだろ!しかも幼稚園のとき!」
「神父さんの真似をして一時期僕もやってたんだよ」
もっとも,兄に気づかれないよう,そっと口付けただけだったが。
「んなっ・・おまえ・・」
さらっと暴露した弟に燐の目が見開かれる。
「そんなことより」
雪男はにっこり笑う。
「兄さん,時間・・・大丈夫??」
「え」
恐る恐る時計を見ると。
朝のHRまであと15分。
家から学校まで走って5分。
一瞬固まる燐に雪男が笑う。
「ははっ、兄さん、その顔最高だ」
「ちょ,ま,お前っ・・もっと早く起こせよっ!!このホクロ眼鏡っ!」
そういうとわぁわぁ言いながら、雪男の目の前でぽんぽんと服を脱ぎ始める。
雪男がじっと見つめていると。
「な,なに見てんだよっ!あっちいけ!」
いつもなら気にしない燐であったが、昨日あんなことがあったばかりで、雪男のことを意識しないわけがなかった。
顔を赤くしながら,シッシッと手を振る。
ふと、気づいたように燐の顔がいつものそれに戻る。
「・・・というか,お前は学校行かなくていいのか?」
いつもならとっくに登校してる時間だろ,と燐が言う。
「あぁ。今日から兄さんと一緒に登校することにしたから」
昨日はあんまり眠れなかったみたいだから起こせなくって,と雪男が困ったように笑う。
「そうなのか・・・。い,いや!だからって2人で遅刻したら意味ないだろ!?」
「そうだね」
はは、と雪男が笑う。
い、いったいこいつは何を考えてやがるんだ。
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Bkmする