「あ、ここにいるってことは、君もろ組だな!

僕は神崎左門!よろしく!」



丸々とした瞳に、人懐っこそうな笑顔。
春の暖かい風に、さらりと艶のある深い緑色の髪が揺れる。



神崎左門と名乗る彼と目の前にある教室の表札を交互に見たあと、僕は眉を潜めた。




…一瞬教室を間違えてしまったかとヒヤリとしたが大丈夫なようだ。一体、い組の教室の前で何をいっているのだろう、この人は。






いつまでも話さない僕を不思議に思ったらしい神崎左門は首を傾げ僕を見るが、そんな顔で見られても困る。



お互い一切言葉発さず、ひたすらみつめあう。




…あぁ、まったく。面倒だなぁ。




しばらくの沈黙のあと、しびれを切らし口を開いたのは、僕の方だった。





「…ここ、い組だよ」






ぼそりと言えば、僕と教室の表札を何度も見比べる彼。



これでは先程と真逆である。




「ろ組の教室はあっち。」と、指差せば、彼はビー玉のような目でこちらを見たあとぽかん、と口を開け、にっこりと笑った。



「おお!あっちか!まったくこの学園は似たような場所ばかりで分かりにくいな」


困ってるのか困っていないのか、あっけらかんとはなす人物にはぁ、と曖昧な返事をおくり、ぱちくりと瞬きを繰り返す。



「む、そろそろ朝礼が始まる頃だな。君も遅れるなよー!」




折角教えたのにまた逆方向へと走り去った人物に、「あっ、」と声をかける暇もなく、ぼくは呆然とその場に立ち尽くした。


視線をあげれば[一年い組]とかかれた表札が目に入る。





…少なくとも君より遅れる心配なんてないと思うけど。





「…変な…、やつ、」




頬を小さく掻いて、教室へと足を踏み入れる。







サァ…、



穏やかな風が吹き、桜の花びらが廊下にはらりと散らばる。







暖かな春の温度に、何故か先程の少年の顔がちらつき、僕は顔を振った。








「さぁ、行こうかジュンコ」






懐のなかで小さく舌を出す可愛いペットに笑いかけ、僕は雑踏の中へと足を踏み入れた。








―…はじめての学園生活が、幕を開ける。












(春、君と出会った、春。)







――――――――――――――――――――


孫兵は入学初日はジュンコを隠して登校してて、二日目から普通に首にかけて学園生活を送ってたらいい。
んで、二日目の首蛇事件で、周りから奇異の瞳で見られて人間嫌いになったらいい。
それを癒すのが左門の役目。
左門をきっかけに三年生と仲良くなっていったとかだったら、私が喜ぶ(*^^*)
りこたんのお陰で三年生がかわいくて仕方ないよ〜!







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