夏の夕暮れに浮かぶ白く透ける様な月は、時が過ぎると共に本来の月色になる。

「あっぢぃ……」

与えられたメニューを暑さで体力が何時も以上に削られていく中、切原は三強を叩きのめす為の『布石』だと耐え、こなしていた。
練習終了の合図が出る頃には、既に余力も残っていなかったか、コートに寝そべってしまっていた。
暑い暑いと言う癖に、陽の光を十分に吸収して熱を持っている場所から動こうとしない切原だった。

「ねぇ、柳?」

「どうした、幸村」

「早く移動させないと、干からびちゃうよ……あれ」

「何故、お……」

「俺に言う、って言うと思うんだけど、あれの相手出来るの……柳たげなんだもん」

俺達では手に余ると幸村は付け加え、口の端を少し持ち上げて、人の悪い笑みをしてみせる。そして、手を振り柳の答えなど聞かぬと背を向け、コートから去って行った。
三々五々と散っていく部員達の中、未だコートと戯れている切原と、ベンチに腰掛けデータの整理を続けている柳だけが取り残されていた。




暫くして。
ぱたん、と書き込みの済んだデータノートを閉じて柳は、やれやれと言う表情をする。
陽は傾き、白くあった月は、徐々にと本来の色を取り戻していた。
薄く色付く上弦の月が、薄藍色の雲一つ無い空、天高く浮かんでいる。

「いい加減、体力も戻っただろう……帰るぞ」

「まだ……無理ッス」

ともすれば寝てしまいそうだと危惧した柳は、足先で軽く切原の背を突く。
練習が終わった頃には荒れた息であったが、あれからどれ位の時間が経ったか……月を見れば判り、切原の呼吸も落ち着き払ったものになっていた。
しかし、無理だと言う。

「では、そのまま気が済むまで寝ていると良い。俺は……ん?」

「柳先輩、待っていてくれたんでしょう……最後まで面倒見て下さいッスよ……」

あなた達の作ったメニューで、体力が底を着いたのだから────と。
切原は、寝転んだままの格好で目を柔らかく細めると笑み、柳へと手を差し出した。
差し出されたものを掴んだ柳は、軽々とその身体を引き上げ、両腕の中へと納めてしまうのだった。



空に浮かぶ月は、もうすっかりと色を変えていた……




夕月 20110710




久々に〜テニスのSS更新です。
たまたま今日、夕方に買い物へ、近所のスーパーへ行く道すがらに見た上弦の月。
あの夕方に白く浮かぶ月を見、時間の流れで色が付いて行く様を・・・想像し、これを書きました。
何か、甘える赤也が書きたくなって・・・つい。
別人でスミマセン。涙。
でも、強気発言を入れているので赤也っぽいと言えば、そうなのかなぁ・・・と、しておきます。さらに涙。
その発言により、逆っぽく見えるんですけど、柳赤と言い張っておきます。


短文ではございますが、お付き合いの程、ありがとうございました!!














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