ョコレートな僕ら





三年連続で跡部には、勝てなかった。
忍足は、氷帝の王を遠目から眺めつつ溜息を吐いた。

テニスの話しかと思いきや……今日は、バレンタインデー。
跡部の周りでは、女の子達が色めき立ち、用意したチョコレートやプレゼントを渡そうと必死だった。
そんな様子を尻目にしていた忍足だが、決して自分自身ももてないと言う訳ではない。
唯、跡部の周りが異様過ぎて、この様を三年間見続けて来たのだと思えば、同じ男として悲しくもあり、悔しくもあった。


一年生の頃から才を放っていた跡部。
口で叩く言葉か大きいだけかと思い、小鼻を鳴らして目にもくれなかった忍足の第一印象。しかし、言葉以上の事をやってのける彼に……次第に惹かれて行った。
才だけでは無く、努力も人一倍……見えない所でしていたのも密かに知っていた。
本人に知られると命の危険があるので、心の奥だけで、自分だけの『秘密』として抱き締めていた。


「今年は、勝てると思とってんけどなぁ……どーもアカンわ」

「俺様に勝とうなんて一千万年、早ぇんだよ」

もの凄い年月を言われた忍足は、勝ち誇っている跡部に苦笑いをしてみせる。
この様子を面白がって見ていた向日は、二人が貰ってきたチョコレートの数を樺地と一緒に数えていた。
すると、忍足と跡部の制服を引っ張って向日が言った。

「あと一個あったら……跡部に勝てるぜ。な、樺地」

「……ウス」

何分も掛かって数え終わった二人だったが、跡部が信用ならないと言い出す。
今度は、忍足と跡部も加わり数を数えたが結局、数は変わりなく『同数』だった。

「今年は同数でも、俺様には過去の実績がある!!」

だから勝ちだと言いたい跡部に、以外と子供っぽいと向日は思うが、口に出すと何をされるか判らないので、必死でそれを喉の奥へ押し込む。
忍足も、そう言いたいところだったが、向日にならって黙りを決める。
結局、勝てず終いだったかと忍足は、帰り支度を始めた。
折れた忍足に、最後まで跡部に噛みついて欲しかったと祈っていた向日も、樺地や他の面々と一緒に帰って行った。

「おい」

部室に残されたは、忍足と跡部だけだった。
声を掛けられ、咄嗟に自分が呼ばれているのだと気付かなかった忍足は、テンポのずれた返事を返す。
なんやねん、と振り返ると……

「今年は、お前を勝たせてやる」

そう言った跡部は、振り向いた忍足の首元に腕を回し、口に銜えていたハート形のチョコレートを差し出したのだった。




チョコレートな僕ら / 20110213




またまた忍跡ですが・・・こんなんでスミマセン、バレンタインデー小話。

素直でない跡部が出ていれば良いかな。汗。
ガックンの言葉遣いもままならなくて・・・ほんと好きな方には申し訳なく思います。
でも、忍跡・・・好きなんで、氷帝っ子達も書いていきたいです。少しずつですが。


少しでも二人のやり取りを楽しんで頂ければ幸いです。
駄文、お付き合い頂き、ありがとうございました。


















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