地悪な、好き。








愛しいあの人は、風に舞う花弁の様。

あっちへ、ゆらり。
こっちへ、ゆらり。

ゆらゆら揺れて、掴まえる事の出来ない存在。


だけど……

今日だけは、何処へも行かないで。
僕の傍に居て下さい。
同じ時間を共に過ごす事を……


どうか、許して下さい。





「おーい、紳士様が探してだぞぃ!」

「……んー、知っとるぜよ」

「は?! んじゃ行ってやれよ」

「えーんじゃ。俺ん事、探しとるんなら、見付けられるまでほっといたらえぇき」

声を掛けてきた丸井へ仁王は、独特の口調をしてノンビリと声を発する。
今日は、冬だと言うのに、春の如く暖かい陽射しが降り注いでいた。お気に入りの場所で日向ぼっこをしながら仁王は、『紳士様』と言われた男の登場を待ち侘びていた。

「なぁ……好きなんだろぃ?」

――――意地悪ばっかしてんじゃん。
何時も何時も、仁王を探し回っている紳士様の姿が不敏で仕方ないと丸井は、猫の様に俊敏に逃げて行ってしまう事の疑問を口にする。
ふふ、と軽く笑い銀髪に光りを浴びせ煌めかせて、目の前で困り顔をしている丸井に答えた。

「好きじゃ……大好きナリよ。でも、それだけじゃ足りん。もっと、もっと俺ん事だけを考えてくれんと……嫌なんじゃ」

そう言い放った仁王の表情は、寒さなど吹き飛ばしてしまう程に眩しく、暖かさを帯びていた。
ある意味、惚気を聞かされた感がすると丸井は、呆れた顔で彼には背を向けた。

「仁王にイジメられたから、ジャッカルに慰めて貰おっ……と」

「それが、良いぜよ」

ひらひらと後ろを向いたまま手を振り、熱い熱い仁王の傍から退散する丸井だった。

「早よ来んしゃい。待ってるぜよ、紳士様」

お気に入りのこの場所で、紳士様の登場を今か今かと待ち続けている仁王は、晴れ渡り澄んだ空にも似た笑顔をして見せていた。





意地悪な、好き。
20101202






仁王誕生日小話、前哨戦です☆

最初に書いた詩的のような物は、この後に出てくる紳士様に繋がる感じです。


一番ベタベタ度の高そうなジャブンから、ブンちゃんにお手伝いをして貰いました。
こんなベタ惚れしてる仁王って…珍しい?かな??
うちの仁王は良く紳士様を挑発してますが…スイッチ入った奴には勝てないので、威勢だけは良い子です(笑)




当社比で行くと、かなりおおっぴらに『好きだ』と言ってる仁王…が、この後どーなるか…私にも判りません(をいっ!)ですが、少しでもこの小話を楽しんで頂けたなら幸です。


お付き合いの程、ありがとうございました☆





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