タリノセカイ








――――っ。

――――りっ。


(誰やねん。邪魔しくさって……)

イヤホンで外音を遮断し、太陽の目映さを上着で覆い隠す。
柔らかな芝生に寝そべる忍足は、ゆらゆらと午睡へ誘われていた。
もう少しで完全に睡魔に捕われる――――と思った所に、耳へ届けられる音楽の隙間で、混じる雑音に苛立ちを覚える。
誰にも邪魔をされたく無いと隠れていたが、雑音と言う名の『人の声』に午睡を阻まれてしまった。
すっぽりと顔を覆っていた上着を取り、片目を薄く開いたその瞳へ飛び込んで来た人影に忍足は、芝生の上に横たえていた身体を引き起こした。

「なんで跡部が居てんねん?!」

「てめぇの行動なんて、お見通しなんだよ。あーん?」

――――サボる気、満々だな。
こんな場所、跡部が知る筈も無いし、何故判ったのだろう?
ちくちくと突き刺さる彼の言葉と、気付かれてしまったエスケープに忍足は、太陽の光りを背に見下ろしている彼に土下座をする。

「いやぁ〜全然、サボる気なんてあらへんよ」

「減らず口、叩いてねぇでコートへ行け」

「せやけど、気持ちえぇ天気やし……ちょっとだけ、な!! えーやろ跡部?」
伊達眼鏡の向こう側にある瞳を少し細め、目尻を下げて頼み込む忍足の、尻の辺りを蹴り上げて跡部は踵を返す。
蹴られた辺りを押さえながら痛い、痛いと喚く声を背に、

「勝手にやってろ。監督には、俺からよーく伝えておいてやる」

こう言葉を置き捨てる跡部は、不敵に笑った。
今、背中を見せている彼が、どの様な顔をしているのか……
しっかりと読み取った忍足は、立ち去ろうとする跡部の腰周りに腕を絡めて引き寄せた。

「行かせてたまるか! 何、言いよるか判らんわっ!!」

「馬鹿が! てめぇが昼寝をしたがったんだろうが!! 離しやがれっ!!」

「離すか、アホ!! こないなったら跡部も道連れや!!」

馬鹿呼ばわりされた忍足は、アホ呼ばわりした跡部を引っ張り、二人もろとも芝生の上にひっくり返った。
しっかりと跡部を抱き留めたまま下敷きになっている忍足は、先程まで日避けに被っていた上着を素早く被せ、光りを遮断する。
闇の中、抱かれた腕より逃げ出そうとする跡部の身体を、背中と頭を押さえ込み一層強く抱き込む。

「はっ、離せっ!!」

「嫌や。せっかくこーやってフタリノセカイになれたんや……簡単に離してたまるか」

――――大人しぃ、しとき。
自分の胸の上で駄々っ子の様に暴れる跡部の耳元に、優しい吐息混じりの囁きをする。
その声色に感じ入り、身震いをさせている可愛い人へ頬を寄せた忍足は、ハチミツ色した跡部の髪を撫で『おやすみ』と言うのだった。







**



――――激ダサだぜ。
遅刻をし、居残り練習をさせられている二人を見た宍戸の一言に、傍に居た鳳は『跡部さんと忍足さんが羨ましい』と溜息を吐く。
夕闇が迫るコートに、頬を張られた手の痕がくっきりと残っている忍足と、眉間に皺を寄せている跡部の影が伸びていた。






フタリノセカイ
20101007










うー……
初めて忍跡書いたんですが〜こんな感じで良いんでしょうか。滝汗。



なんか初めて尽くしで、なんてコメントしたら良いのか……わかんないので退散するっす!!



こんな感じではありますが、跡部様&忍足の誕生日祝い小話でございました…緊張。
こっそり鳳宍(笑)





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