の手、その指、その心









その手に、触れて欲しい。
その指に、触れて欲しい。


何時の日か。
僕の全てに……触れて下さい。








「……」

「……」

「……ごほん」

「……え?」

「先程から真剣な顔をして、何を見ているのだ?」







本来、その日の活動日誌を記入するのは部長の役目だが、その部長である幸村がなかなかと作業をせず、時間だけが悪戯に過ぎていた。
筆記具を持ったまま唸っている幸村に、業を煮やした副部長の真田は、彼からノートと筆記具を取り上げ作業を始める。

「ありがとう、真田!! それって面倒……」

「言うな、幸村。他の部員に示しが付かなくなる。柳にも強く言われるぞ」

視線は書き連ねて行く文字に落としたまま、真田は幸村を叱る。
そもそも、彼の仕事を肩代わりしている真田も、柳に見つかれば注意を受けるだろうに……
時間を無駄にするのなら、小言を言われた方が良い。
真田の至った結論だった。







ぱたん、と書き終えた日誌を閉じた真田はもう一度、幸村に同じ問い掛けをした。先程とは変わり、目の前に座る幸村の方へ視線を流して声を発した。
その刹那。
ぽんっ、と茹だった音を頭の先からさせた様な幸村は、顔を紅くして目には涙を浮かべていた。

「さっ……真田のバカっ!!」

「ばっ……馬鹿とはどういう事だっ!!」

「急に顔、上げるなっ!!」

ぼろぼろ、と涙を流して泣き出した幸村の、怒りの矛先がいまいち良く判らずにいる真田は、腕組みをして小首を傾げる。
カンに障る事をしたのだろうか?
暫し考えるも埒が明かず、先ずは幸村を泣き止まそうと事を起こす。
タオルを手に立ち上がり、彼の傍へ寄ると零している涙を、手にしたものに染み込ませて行く。

「落ち着け!一体、俺は何をしたんだ?意味が判らん??」

「……もっと……」

「ぬ?」

「もっと……触って……」
――――欲しいんだ、真田の手で。

瞳から溢れ返っている涙を押さえているタオルを取り払った幸村は、直接、真田の手に触れる。
その行動と言葉に、今度は真田の頭上からぼんっ、と音が鳴った。
幸村以上に顔を紅くして狼狽える彼へ、身体を添わせる。
そして。
飽く事無く、際限無く――――真田の手の感触を欲する幸村だった。








その手、その指、その心。

20100912



幸ちゃんは、真田の綺麗な文字を綴る指先を見、いろいろ深ーい所まで考えちゃって……
いたら、タイミング良いのか悪いのか、真田が顔上げちゃってバツが悪くて泣き出した……でした。




説明なかったらナニガナンダカですみませんな駄文でした。(T_T)







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