虹色恋模様
突然の雨に降られ、帰る事が出来なくなってしまった切原は、窓に打ち付けられる雨粒の流れ行く様を見、溜息を吐いた。
硝子に手を当て室内から空を見上げれば、銀灰色した雲の隙間を、金光色した閃光が轟音を伴い駆け抜けて行く。
「……う、うわっ!!」
触れていた硝子窓がその音に反応し、空中を勇ましく飛んでいた振動を切原の手に伝えた。
轟音と振動に驚き、声を上げて一歩、窓から後退るのだった。
「それ程、驚く音でも無いだろう?」
「そ……そうっスか?!先輩は、そこから聞いてるから平気なんっスよ」
「では、お前と同じ位置に立って……雷の音を聞くとしよう」
切原と共に、突然の雨に足止めを食らわされた柳は、雷の音如きに声を裏返している後輩の傍に立ち、雨空を見上げる。
先ほど溜息を吐いた切原同様に、酷い降り方をしている雨に向け、その態を取とる柳だった。
「も、もうすぐ来るっスよ!!」
「そこまで構えなくとも良いだろう?……まさか、怖いのか?」
「なっ、何、言ってんですか?!怖いわ……」
訳が無い――――
と、続く言葉は、無残にも切原の悲鳴によって掻き消される。
何処かへ落ちたのでは無かろうかと思う位に雷音が響き、凄まじい稲光が天を走った。
余りの激しさに、日頃強気でいる切原は震え上がり、傍にある柳の身体にしがみ付いてしまう。彼のワイシャツの胸元を必死で握り締め、頭を下げて目を強く瞑ると、雷の行き過ぎるのを堪え忍んでいた。
その様を、切原の頭上から見つめていた柳は驚くも、直ぐ様ふわ、と口元を緩めて笑みを浮かべる。
切原の握り締められている手を、恐怖で揺れている髪を、気持ちが穏やかになる様にと優しく撫でた。
「やはり怖いのだな。お前のデータを一つ、取らせて貰ったぞ」
「い……言い振らさないで下さいよ!!特に部長と副部長と……仁王先輩には!!」
幸村と真田が出てくるのは分かるが、そこで仁王の名が出てくるのが可笑しくて、言わないと約束しながら笑いを堪える柳だった。
自分に触れている指先が、笑いを堪えて小さく震えている事に気が付いた切原は、勢い良く顔を上げ頭上にある先輩の表情を睨み付ける。
からかわれている恥ずかしさと、そこまで笑わなくてもと言う怒りとで、顔を赤くして膨れっ面をして見せた。
そんな切原が可愛くて仕方ない柳は、更に笑みを深くすると、拗ねて膨らんでいる彼の頬をひと撫でした。
「俺からは言わなくても、赤也がこうして自らの弱い部分を、他の人間に曝さなければ良いだけだ。それに……」
――――こういう事は、俺だけにするんだぞ。
怖いからとて誰彼抱きつくんじゃない。
そう釘を差した柳は、頬を撫でていた指を、癖のある切原の髪へと差し込む。
別の意味で顔を赤くしている切原の、その頭を両腕で掻き抱き胸元へと引き寄せた。
自分だけに見せている表情を、誰彼に知られない様にと柳は、愛しい子を抱き締め隠してしまうのだった。
――――何時の間にか雨は止み、天には鮮やかな虹の架け橋が浮かび上がっていた。
20100604
***
誕生日おめでとう、柳!!
またまた雨ネタですが、しかも赤也が誰?ですが……大目に見てやってください、誕生日祝いだから(汗)
書いていて思ったこと。
私、柳の事好きだけど、考えてる以上に好きなんだ……でした。
実感した、当社比ですが真田より格好よくなってる!!
そんな訳で、まだまだ未熟者な柳赤ですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
誕生日祝いになってるか不安ですが…
とにもかくにも、誕生日おめでとう、柳!!