人、想い、告げる。





――――傘、持って無いから連れて帰ってよ。

今日は雨が降るかも知れないと、天気予報が告げていたのを聞いていなかったのか?
真田は、隣を歩く幸村に軽く視線を流し、心の中で問い掛けた。
昼頃から雨は降り始め、一日の授業が終わるまで止まずにいたお陰で、テニス部の練習は中止となった。
それでも、日課を崩したくないと真田は、部室へと足を向ける。
少しでも身体を動かそう、体力強化を図ろうとしたが、後を追い掛けてきた幸村の『傘が無い』の台詞に断念するのだった。



***



真田の視線に気付いたか幸村は、たまにはこんな日も良いじゃないか、と顔を上げて微笑んでいた。
一つの雨傘へ二人して入るには狭く、傍らで笑顔を見せている幸村を雨に当てないよう気遣う真田は、傘を握る手を僅かに傾ける。
静かに降り落ちる雫をつま弾く傘布は、穏やかで規則正しい音を刻んでいた。
何時か止まないかと、傘からしばしば顔を覗かせ空模様を伺いながら歩く真田と。
布が弾いて行く雨音を耳にして、傘持つ彼に歩幅を合わせて歩く幸村と。
華やいだ会話がある訳でも無いが、心中では恋して止まない存在がすぐ近くにあるのが……ましてや、同じ傘の中に収まっているのが嬉しくて、幸せで鼓動を高鳴らせていた。



***



校舎を出、もうすぐ校門に差し掛かろうとした時、幸村を庇い半身が濡ようとも気にせずにいた真田の、柄を握る手にそっ、と手が重ねられて来た。

「……ぬ」

肌が焼け節くれた手を、華奢な風に見えるが、決してそうではない五指が柔らかく包み込む。
突然の触れ合いに、困った表情をして小さな声を発した真田は、足を止め幸村の行動に目を見張る。

「よいしょ……っと」

「何だ?この差し方だと、お前が濡れてしまう」

「良いんだよ、これで……」

――――真田が濡れてるなら、俺も濡れるの。
重ね合わせた手はそのままに幸村は、傍にある温かな存在へと身体を寄せて行く。
誰見てるとも知れない場所であったが、構う事なく真田の肩口に頭を預けると目蓋を閉じた。

「――――好き……だよ」

降り止まずにいる雨の下。
幸村からの告白に真田は、目の前で揺れている髪に口付け……同じ答えを彼に告げるのだった。






20100430





***




結構ヒマがかかっちゃっ真幸。
雨降ってるくせにこの傘の下は、甘ったる過ぎて晴の日差しのような穏やかさがあれば良いと思います。

しかしまぁ、真田からの告白って……何時出来るんだか?って思っちゃいます。意外とポロッと言っちゃっても……良いのかも知れない(笑)

幸ちゃん、真田の事が大好きなんです……うちの(笑)



乙女チックmode全開でお送り致しましたが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。







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