※エア来神アンソロに提出します。
※来神時代の四人組。クリスマスネタです。





「何、お前真剣に選んでんの。」

「………苺のスペシャルショートケーキ、キャラメルティラミス、マンゴーペー
ストフルーツケーキのどれがいいと思う?」


いつもの酷くうざったい気持ちにさせるような何かを企んでる眼ではなく、ゆる
く細めたそれでチラシを真剣に見つめていたかと思えば、突然聞いてくる。臨也
の手元を見るとそれは有名な洋菓子店のチラシで、このあたりの季節になると街
のいたるところで配られている。もちろん、俺も貰ったから知っていたのだが家
族の誰かがどこかに注文したらしく、俺にとっては用のない紙だった。それをこ
いつは両手で掴んだり、片手で指を差したり、折ってみたり、裏返したり、とに
かくひたすらに見ている。


「あー、どれでもいいんじゃねえか?どれも上手そうだ。」

「そりゃ、甘いもの好きのシズちゃんから見たらどれでもいいとは思うよ。でも
さ、これ食べるのシズちゃんだけじゃ無いじゃん。自分の勝手な主観だけで決め
つけないでよね。」


チラシを持っていない片手の手のひらを横に突き出して、やれやれとでも言いた
げな態度を示した。じゃあ、わざわざ俺に意見求めんな!バカが!とでも叫びた
くなったが、今はそうはいかない。今日、授業の邪魔をして受けられなかったら
留年してしまう。それだけは避けなければならない。沸点ギリギリまで高上った
怒りをなんとか収めて、小さく、じゃあてめえはどれが良いんだよ、と隣に座る
臨也に聞いた。俺の怒りが爆発しなかったことを残念に思いながらもニヤニヤと
チラシを突き出してくる。


「俺はさ、マンゴーペーストフルーツケーキが良いと思うんだ。だって珍しいし
、これならドタチンとか新羅とかも普通に食べると思うんだよね。」

「なんだ、それ俺も数に入ってたの?」


後ろの席の新羅が話に混ざって来たのは自分の名前が出されたからだろう。それ
までは授業とは全く関係無さそうなよくわかんない言葉の本を読んでいた。英語
とかならなんとなくわかるけど、そういう原型が全く見当たらないからよくわか
んない言葉でいいだろう。それでもその本の傍らにはきちんと数学Tの教科書と
ノートがあるあたり、こそこそと読んでいるんだろうと思った。


「新羅が入ってなくてあと誰がいるのさ。」

「それ自慢げに言うことじゃないと僕は思うなぁ。」

「そもそも、これ何の話だったんだ?俺は臨也がチラシ見てたからてめえが食べ
るケーキ迷ってるのかと思ったんだけどよ。」


不思議に思って聞いてみたら、臨也がなに言ってんのこいつみたいな顔をしたか
ら、むかついてぶん殴りはしないもののデコピンくらいは食らわせてやろうかと
思ったが今度は新羅に止められた。臨也は軽い口調でごめん、ごめん、説明が足
りなかったね、と言った後に細い指を一本立てて、クリスマスパーティーをする
んだよ、と誇らしげに言った。更に、当日はきっとみんな予定があるだろってこ
とでイブに予定してる、場所はまだ未定かな。と付け足した。


「行かねえ。」

「え!なんでさ!だってシズちゃんなんてイブとか絶対予定無いでしょ。家族で
は当日にお祝いするって幽くんから聞いたよ?」

「なんでお前が幽から聞いてんだよ。」


だって、アドレス知ってるもん、と真顔で言われて心底落ち込んだ。更に言うと
幽から教えたと聞いて、更に落ち込んだ。嘘つけ、と思ったがアドレス帳に書い
てあるのを見せられたから本当になる。


「静雄は弟くんが大切だからね。臨也みたいなゲス野郎と関わって欲しくなかっ
たんでしょ。」

「うわ、なにそれ新羅酷い。」

「褒めてんだよ。じゃあ、静雄も行くってことかな。」


も、ってことは新羅は行くのかよ、と小さく聞いたら、晴れやかな笑顔でもちろ
んだよ、と言った。興奮したような話口調で何故なら当日はセルティから誘いが
あったからね!と言った。片思いの相手からクリスマスの誘いがあったらそりゃ
あテンションも上がるよなぁ、と人事のように聞き流した。こうなると新羅は長
い。昔からそういう奴だった。


「じゃあ、後はドタチンだね。」


そう言うと臨也は2つ隣の列の前から3番目の席にいる門田の方を見た。引き出
しの中からルーズリーフを1枚取り出して、それにペンを走らせている。内容はイ
ブの日にみんなでクリスマスパーティーをするってことと、ケーキはマンゴーペ
ーストフルーツケーキで良いかな?という旨らしい。他のケーキは苺のスペシャ
ルショートケーキとキャラメルティラミスだ、と書いてある。書き終わると、そ
れを丁寧に折りたたんで、俺に渡してくる。それに1つ溜め息を吐きながらも隣
の奴にわりぃ、これ門田に回してくれないか、と紙を渡す。隣の奴は小さく返事
をするとそれを前の方に回した。


「ドタチン、マンゴーペーストフルーツケーキだと思うんだよね。なんかこうド
タチンって漢じゃん。」

「いや、もしかしたら王道の苺のスペシャルショートケーキかもしれないよ。意
外と京平ってそういうのは王道好きそうだし。」


2人が返事を予想しながら門田が渡された紙を見て、呆れたような、またか、と
思うようなそんな顔をした。それでもどこか楽しそうな表情に見えたのは多分門
田もこのメンバーでするクリスマスパーティーをそれなりに楽しみに思ったと言
うことなのだろう。門田から戻ってきた行きと同じように丁寧に折り畳まれた紙
を俺が手に持つと臨也と新羅が楽しむようにそれを覗き込もうとしてくる。俺は
少しだけ緊張を感じながらも開いていく。綺麗な字ではあるがそれなりに歪な文
字にすっきりと一行で書かれていた。


「キャラメルティラミス。」


ぼそりと呟くと新羅はへぇ、意外だなぁ、と一言漏らしてストンと深々と座り直
した。ちなみに臨也は紙を奪い取って嘘だ!と叫んだ。クラス中が臨也に注目す
る中、門田の方をチラリと見たら耳が赤くなってるのが見えた。





【レッドグリーンの思い出】



(そんなに俺がそれを選ぶのはおかしいのか。)(私は個人の嗜好にとやかくは言わ
ないけど意外だな、とは思ったかな。)(いやあのね!なんか俺もっとドタチンは
オシャレなのは食べないかなぁって思ってただけなの!ごめんね!)(門田、落ち
込むな。これくらいで落ち込むとノミ虫はつけあがるから。)(俺、ドタチンには
意地悪しないよ!)





2010,12,23

来神組。

エア来神アンソロに提出します。

めちゃくちゃ仲が良い誰おま来神組ですみませんでした!
ちなみにケーキの名前は適当です。
素敵な企画にこっそり参加してしまいました……。皆さんの来神萌えをたくさん
頂きたいです。来神組、来神時代大好きです。ありがとうございました。

嘘つきムドラー/神谷
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