「そういえば二人はバイトはしないのかい?」
ある晴れた日の昼休み、ふと新羅は二人、臨也と静雄にそう言った。
「俺は別に必要ないからね」と臨也。
「バイトか…考えたこともあったけど、池袋じゃ出来ねぇからなぁ」と言ったの
は静雄だ。
自動喧嘩人形として不本意ながら知られてしまった静雄が地元の池袋で採用され
るのは確かに難しいだろう。
「池袋じゃなきゃいいんじゃねぇのか?」
という門田の提案になぜか臨也はにやりと笑った。
「この間さバイトの募集かけてるところがあったから連絡してみようか?」
「ホントか!?」
出来るはずがないと諦めていたバイトが出来るかもしれないことが余程嬉しいの
か、常ならば目が合おうものなら喧嘩に発展するほどに嫌悪している臨也に静雄
はずずいっと迫った。
静雄との慣れない距離にか臨也の表情に僅かの戸惑いが混じるが元来鈍い静雄が
気付くわけもなかった。


「確かにバイトの種類は問わなかったし、なんでもいいんだけどよ…なんで執事
喫茶なんだ」
「え?ただ単に俺がシズちゃんの執事姿が見たかっただけだけど?」
「しかもなんで手前までいるんだよ」
「俺が電話したんだから俺もいて当たり前じゃない」
執事服を着た静雄の問いに同じく執事服を着た臨也は平然と答えた。
細身だがかなりの長身で喧嘩『人形』と評される程には整った容姿の静雄と、性
格はともかく眉目秀麗という言葉が似合う臨也がバイトとして採用された次の日
から、口コミで広がったのだろう店内は賑わっていた。
「しかしホントに賑わってるな。いきなりホールから裏方になるし」
たしかに力仕事の方が性に合ってるけどな。と苦笑しながら独り言をこぼす静雄
は知らないのだ。
静雄たちが採用されてから裏方も忙しくなり力のある静雄がホールから回された
のも事実だが、実際は予想以上に訪れた客たちに執事姿の静雄を見せたくないと
いう臨也の独占欲からくるものであった。
「ねぇ、シズちゃん。バイト辞める気ない?」
「はぁ?何言ってんだ手前。辞めるなら一人で辞めろ」
サボるなとさらに一言言われた臨也は渋々仕事に戻っていった。
「やっぱり辞めさせよう。バイトしてない方が俺だけのシズちゃんだったし」
臨也の密かな決意は静雄に知られることはなかった。
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