師走。師も走ると書くこの一月は誰も彼も忙しいものだが、高校生にはあまり関
係ない。せいぜい期末テストがあるくらいだ。

「あー終わった!ほんと期末テストとか面倒。なくなればいいのに」
「無茶言うな」

黒いピーコートにマフラーをぐるぐる巻きにした臨也がぐーっと伸びをした。た
め息をつきながら突っ込んだ門田はダウンジャケットを着ている。
今日は一段と冷え込んだ日だ。そんな日に静雄は上着と、申し訳程度にマフラー
を巻いているだけだった。寒そうではあるが、特に気にしていないようにもみえ
る。

「静雄、今日はコート着てないの?こんなに寒いのに」
「あー…遅刻しそうで忘れた。幽が追いかけてきてマフラーだけでも巻いて行け
って渡された」
「まぁ、今日はテストだし遅れるわけにはいかなかったしね。寒くないの?」
「寒い」

無表情に言い切った静雄に新羅は笑うしかなかったが、臨也はそれを聞き逃さな
い。少し後ろを歩いていた静雄に顔を合わせるように振り返り、ニヤリと笑う。
それを見た門田と新羅はあぁ、いつも通りかと溜息をつく。それもいつも通りの
光景だ。

「シズちゃんってばほんとに野生動物だよね。そんな恰好で寒くないとか人間じ
ゃないでしょ?ダメだよ人間のカッコしてちゃ」
「…いぃ〜ざぁ〜やぁ〜…てめぇ、こんな日にも俺に喧嘩を売りたいらしいな」
「あはは、そんなのシズちゃんの思い込みじゃない?」

その言葉と同時に、臨也は駆け出す。静雄は追いかける。また追いかけっこのス
タートだ。
始まった、と笑いながら新羅は門田に声をかけた。

「門田君、クリスマスは予定あるの?」
「いや、親父も仕事だし誰か一緒に、というわけでもないしな。それがどうかし
たのか?」
「うちでね、セルティとクリスマスをしようかという話をしていたんだけど、静
雄たちも一緒にどうかと言われてしまってね」
「俺は別にかまわないが」
「じゃあ、24日にうちに来てよ。場所は、静雄に聞いてね」

あれを止めるのか、と門田がはぁ…と足を踏み出したと同時に目の前を静雄が投
げた自動販売機が掠めた。そのまま固まってしまった門田に驚いたのは何より投
げた本人と本来当たるはずべきだった人間だ。

「か、かどた…」
「ドタチン、大丈夫…?」
「…………お前ら、」

その日新羅は久しぶりに本気で怒鳴る門田と、正座で怒られる高校生を見た。




12月24日。
四人と一人の異形がバカ騒ぎして今度は新羅まで正座で叱られることになるのは
、また別のお話。
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