頭を抱えてしゃがみこんでしゃくりあげてそれをただ見つめているけど、どう対応すればいいのか分からない。慰めるってどうするの。もしかしてこれって泣かせたのは自分なんだろうか。手を差し伸べる勇気も出てこなくてただずっと見続けていた。時間が経てば何か変わるのかな。ここから立ち去ったらだめなのかな。何もかもわからなくてとりあえず時計を確認した。午後4時12分。赤い赤い夕陽がだんだんと強く長くなっていく。この夕陽みたいに自分たちも沈んでしまえばいいのに。


四階のベランダから顔を出したとき思わず目をつむった。眩しい光が目を差して染みる。眉と同じ位置に手で傘を作ってやるとだいぶましになった。夜に近づきゆく空には丸く大きい夕陽が木々とビルの隙間に沈んでいくところだった。きっとこの景色も今年で見納めだろう。ちょうどこの場所で暁を見れるのは寒さがのこるこの季節だけ。来年には自分はこの場所ではない違う場所で新しい夕陽の見える場所でも探しているのだろう。変わらない未来の自分を想像し、笑った。


重い扉の先は2つ前の季節を残したままだった。竹箒はいいものの何故か装着義務を課せられたゴーグルをしぶしぶと瞳の上にかぶせるとやはり納得いく景色はなかった。後ろから入ってきた仲間たちの中には初めてここに来る人がいたみたいで歓声をあげる。けれどこんなにたくさんくしゃくしゃになった乾いた葉があったら何もキレイじゃない。明日からここが自分たちの秘密基地なのでまだ、今日はそうじゃないからいいのかもしれない。きれいになったら、ここで夕陽を見よう。


まだ夏の暑さを残すここには未だ渋って生きるセミたちの叫びが聞こえる。でもここに張られた水は太陽が痛いときと違って冷たい。空気と水が勢いよく混ざる音がして振り返ると口の中に安全なんて言葉を知らなそうな水が入り込んできた。消毒するために入れられた塩素の味が口の中に広がるから粘液とともに吐き出した。時折吹く風が濡れた体を冷やす。水面に反射する朱色の光が水底で吐き出された空気に押し上げられてゆがむ。何故かほほえましくなって足を蹴り上げたらぶつかった。ごめん。


夕陽の季節