いつまでも一緒にいたいと願ってしまうのは駄目なことなのだろうか。ずっとずっと一緒にいたいと声をあげて抱き着けば誰もが皆、許してくれたりしないだろうか。子供だし、しょうがないなとか言ってくれないだろうか。無理ならば反対を押し切って心中でもしてしまおうか。そんなことをしようとしたら、もう大人なんだからちゃんと考えなさいと言われてしまうのかな、なんて。
言葉だけならば笑えてしまうけれど実際に行動したらどうなるんだろうね、と言ったらこう言ったよね。「どこまでも一緒にいよう」って。僕らのうるさい上司なんか追いつけないほど遠くに行ってさ、二人で毎日笑いあうんだ。どう?素敵だと思わない?海ばかり見てつまらなくなったら君と共に空に行けるし、陸に降りたくなったらおれが頑張って陸を探せばいいんだって。
そんな冗談さえ言えなくなるのは嫌だなぁ。今から戦いに行くのも嫌だ、本当は。戦艦ならば自分で敵を狙って音と共に力を放てばいいのに生憎おれは九六がいないとダメなんだ。九六のいないおれなんてただの真っ平な艦だよ。でもおれは戦えない。九六がおれの代わりに空を飛んでいくんだ。でもお願い、絶対に帰ってきて。お前の居場所になりたいよ。お前の戻ってくる場所。例えば、家族みたいな。
ちょうどおれは空母という分類だしちょうどいいんじゃないかな。九六のお母さんになるからちゃんとこっちに帰ってくるんだよって。

「でもお前は男だろ」

じゃあお父さんだね。ほら、パパのもとへおかえりって。けど世の中の家族はいいなぁ。命がかかってなくて。お金も、だけど。どっか出かけたり笑ったりいつも楽しそうだもん。うらやましい。

「でも人の形をしている俺らなら、できるかもしれないぜ?鉄の体が町中動いてたら不気味だし」

そうだ、そうだね。もしかしたらそのためにおれらはこの姿を持っているのかな。ちょっと、考えが甘い?でもどちらかだけ、じゃなくて両方あってよかったと思う。もし人の姿だけなら九六抱えて遠くの遠くの誰も知らない場所に行くの大変だよ?九六も人の姿で高く高く飛べるかって言われたら難しいでしょ?とはいえ機会の身体だけだったらこうやって会話すらできないし。あーあ、いつでも一緒にいたいなぁ。


「いつでも一緒なら方法があるぜ」

そういって九六は自らの額に巻かれた鉢巻を解き、それを片手に持ったままおれの背中へと腕を通した。それから伸ばされ戻ってくる反対側の手にも真っ白な鉢巻がある。それを今度は自分の背中へ通す九六は、そのまま後ろでそれを結んでしまった。二人三脚ならぬ二人四脚、ただし胴体は一緒といったところか。これならば一人ではどこへも行けないけど二人でならどこまでも行ける。鉢巻の有効活用、なんちゃって。

「これ、絶対に解かないでね」
「もちろん」

――これならば九十六が遠くへ行ってしまっても、戻ってこれなくなるなんてことも海へと墜落してまうこともなくなる。もし九六が海に眠る日が来るとしたら、おれも一緒に眠ることになるだろう。
ああ、幸せ。

一緒にいよう