俺と六は双子だ。

周りからはいつも似てない、と言われる。

その言葉がいつも鋭く心に刺さるんだ。


道標


「またため息ついてやがる」

「んー…」


安西家、縁側。

今日は日が暖かい。

…じゃなくて、六が意地悪です。


「あぁもう本当まじ無理ふざけんなだよ」

「何があったんだ」

「今日はレナにも似てねぇって言われた」

「まぁあいつは本当ストレートに言う奴だからな」


それは昨日の出来事。

二人で部活行ってたら六の同級生のレナに「ほんと、似てないな」と言われた。

俺にとって六は一番の誇りで一番の自慢で一番の家族だ。

なのになのになのにあいつは…!


「はぁ…」

「そんな落ち込むな、レナも悪い奴じゃないんだ」

「知ってるけどさぁ」


なんかこういう自分にいらつく。

こんなときだけ子供ぶって、拗ねてる自分。

だから似てないんだ。

自覚してる分辛い。


ごろん。

太陽さんにより温まった縁側に転がる。

嗚呼、春だな。


「ふて寝か」

「違う」


ついには逆ギレまでしちゃってさ。

あーあ。


「なぁ、D」

「うん?」

「俺は似てなくてよかったと思う」

「は」


なんでさ、と言う前に俺の隣にごろりと転がる水色。

そしてその大きい手が俺の髪を、撫でる。

優しいこの手が俺のものに、なることはないだろう。


「もし俺とDがそっくりだったら、自分と恋してるみたいだ」

「……」

「似てない他人だからこそ愛せるんだろ」

「っ、ばか、恥ずかしいこと…そんな簡単に…」

「顔真っ赤になってんぞ」

「もう本当ばか!」


例え目の色がちがくても髪の色がちがくても身長がちがくても…いいんだろうが。


俺はこんな双子の兄がいて嬉しい。






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