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君の彼女



彼は言った


「名前っちが好きなんス」って


でも…


「きゃー!!黄瀬くーん!!」
「ねえねえ、メアド教えてよ」

今日も彼は女の子に囲まれてる。

明るくて、小さくて、可愛くて、柔らかそうな女の子たち。

それに比べて、私は…

背が高くて、筋肉ついてて、可愛げなんてこれっぽっちもない。

それなのに、彼…
モデルの黄瀬涼太はそんな私を彼女に選んだ。

けれど私なんかが自身なんかもてるわけなくて…

「これ、あげるー」
「おっ、このお菓子好きなんスよ。ありがとうっス」

そう言ってお菓子をもらって笑う彼はカッコ良くて…

やっぱり私とは程遠い気がする。

お菓子をあげた女の子が、こちらを見た。

その目が、私の自信のなさを見透かしてる気がして…
黄瀬には相応しくないって言われている気がして…

居た堪れなくなって、教室を出た。


私が向かったのは校庭の隣にある多目的コート。
昼休みは解放されていて、ロッカーにおいておいた自前のバスケットボールを持ち込んで練習する。
いつもは、私一人だが、この日は先客がいた。


バシュッ


爽快な音をたてて、ボールがゴールに吸い込まれた。


投げた本人

ゆき先輩こと笠松幸男先輩はこちらを見ると、遅かったな、と私に声をかけた。

「ゆき先輩」

先輩はボールをとると、そのボールを人差し指の上で回して

「やるか」

と一言。
それを合図に、私は自前のバスケットボールを脇に放り投げた。


「今のは右にフェイクをかけて左からいくべきだ。」

そう言って投げ渡されたボール。
もう息が切れている私とは対象的に、ゆき先輩の呼吸は殆ど乱れていない。
悔しい。
背は10cmも変わらないのに。

ゆき先輩はミニバス、中学の先輩で、昔からよく練習に付き合ってくれる、兄のような存在。

「で、何があった?」

だから、私のことなんてお見通しで…

こうやって気が済むまで1on1に付き合ってくれた後、悩みを聞いてくれるのがいつものパターン。

はは、っと笑って、呼吸を整えながら、自分のボールを手にとって

「なんか、わかんないんですよね」

そんな言葉と共に投げたボールは、リングに嫌われて、ゴールに入ることなく地面に落ちた。

「あいつの好きな音楽とかお菓子とか映画とか、そんな何気無いこと、何も知らなくて…
喜ぶことなんて、なにもしてあげられないのに…
ほら、私ってこんなだから」

ゆき先輩が私とは逆のゴールにシュートを打つのが音で分かった。

そしてそれが、ゴールに吸い込まれたように入るのも。

「なのに、なんで私を選んだのかなって。可愛い女の子たちじゃなくて、私なのかなって。黄瀬が女の子たちといるの見ると、やっぱり私なんかいらないんじゃないかって」

もう一度、ボールをもってゴールに向き合う。

視界が揺らめいた。

「黄瀬の彼女は私じゃなくてもいいんだって」

再びリングに嫌われた。
それと同じように黄瀬にも嫌われた気がした。

「なんで、あんな世界の違う人好きになって、必要とされたいなんて思ったんだろ」

キセキの世代で、モデルで、イケメンで、性格良くて
対して恵まれた身長だけでここまできた、女の子から程遠い私。

頬を伝う、好きの証。
でもきっと、そんなのきっと黄瀬には届かない。



「諦めんのかよ」

ゆき先輩の言葉に、私は俯く。

頷きたいけど頷けないのは、私が黄瀬のこと、大好きだから。

「早すぎるだろ。まだ第1Q開始数分のくせに諦めてんじゃねぇ。それに…」

パタパタとかけてくる足音。

「知らないなら、これから知っていけばいーだろーが。」

それとは対象的に遠ざかって行く行く、落ち着いた足音と、心地よいバウンド音。



「名前っち!」

大きな声と共に姿を表したのは、綺麗な金髪の彼。
私の大好きな彼。
額には汗が浮いている。

そんな彼を一瞥して、ゆき先輩はブレザーを中指と人差し指に引っ掛け、ボールを片手に去っていった。


彼が…
黄瀬が近づいてくる。

泣いているみっともない顔を見せたくなくて、少し涙を拭って、へらりと笑ってみせた。

「黄瀬もやる?」

そう言ってボールを拾おうと、黄瀬のそばを通り抜けようとした時だった。



突然手が伸ばされて、腕を掴まれる。
へっ、と思った瞬間にはもう、私は黄瀬の腕の中にいた。

「そんな、悲しそうに笑わないでほしいっス」

ぎゅっと、まわった腕に力が篭った。
女子の中ではかなり背の高い私だけど、190cm近くある彼の腕の中にすっぽりと収まってしまう。

「俺、いつもヘラヘラしてるッスけど、名前のこと、本気で好きなんス。だから…」



もっと、俺を頼って



その言葉にすっと、胸のつかえが取れた気がして、また涙がこぼれ落ちる。



これから知っていけばいーだろーが


そうだ。


ここから、沢山彼を知っていこう。

好きな音楽とかお菓子とか映画とか、何気無いことを沢山知ろう。


「涼太」


名前の語尾にっちがなくなったのは意図的なんだろうか。
そんなことは分からないけど、お返しに私も名前で呼んでみた。

「涼太…りょう…た…」

好きと幸せの証はとめどなく溢れていく。
でもきっと言葉にしないと伝わらないから…


私も涼太の背に手を回した。



「す…き」


その一言に、涼太は私の頭上で微笑んだと思う。


ーーーーーーーー

あとがき
インタビュアになきそう。
感情が先走ってしまった作品。
あー、難しい。
ちなみに、この自信のなさは管理人譲り。

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