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初めて


通り過ぎた北風が寒くて、思わずマフラーに顔を埋めた。

初めて彼と過ごす、この季節。

そして、初めて祝う、彼の誕生日。

部活で忙しい彼は誕生日の今日も部活に勤しんでいる。

ふと今までの事が頭をよぎった。

入学して、隣の席になった赤司くんに恋をした。

6月、彼から思いを告げられ付き合うことになった。

嬉しくて泣いてしまったあの日の事が、今は遠い昔のように思えるから不思議だ。



全中の応援に行って、声が枯れるまで応援した私の頭を、彼は嬉しそうに撫でてくれた。

夏休み最後の日には東京タワーで初デートをした。



初めて赤司くんの怒ったとこを見た。

原因は私が黒子くんと意気投合して昼休みにお弁当を食べるという約束をすっぽかしてしまったから。

あの時はもう終わりだと思ったっけ。

放課後一緒に帰る時に、必死で謝った。

散々嫌味を言われ、もうこんな事はしない事、彼との約束が絶対である事と私の予定は必ず彼に伝えることを約束した。

けれどその後

オレだって妬くんだ

と目を反らしながら言われた時には、すごくビックリした。

だって、なんでも完璧な彼と料理と運動以外は普通かそれ以下の私を赤司くんがそんなに好きでいてくれたなんて…

嬉しくて泣きそうになると、今日はよく泣くなって頭を撫でてくれた。



そして、今日。

また二人の初めてを迎える。



「名前」



振り返ると、微笑んだ彼がいた。

「お疲れ様、赤司くん」

付き合い始めた当初は同じくらいだった背は、いつの間にか少しだけ彼の方が高くなっていた。

二人並んで歩き出す。

「部活、どう?」

「順調だ。黒子もかなり良くなってきたよ。」

私から彼の名前を出されないよう、最近では彼自ら黒子くんの名前を出すようになった。

「そっか。」

「名前はどうなんだ?」

「うん、みんな頑張ってるよ。私も次の試合ではレギュラーとれると思う。」

「気は抜くなよ」

「分かってるもん」
頬を膨らませると、彼はならいいよ、と言って私の頭を撫でてくれた。

その笑顔はかっこよくて、綺麗で…

まるで雪のよう。

けれど、とてもあったかい。

この笑顔が私はとても好きだ。



クリスマスに彩られた街を二人で歩く。

さっきまで寒くて嫌だと思っていたのに、彼が隣にいてくれるならこの寒空の下でもいいからいつまでも彼と共にありたいとさえ思う。

「クリスマスちゃんと空けてあるかい?」

「うん、部活もないし友達とも約束してないよ。」

「じゃあ、水族館にでも行こうか。」

「えっ、ほんとっ!?」

勢い良く振り向くと、彼は一瞬ビックリしてから、くくくっと笑い出した。

「名前は子供みたいだ。くくっ。そんなに喜んでくれるとは思わなかった」

笑いの収まらない彼に、だって私達まだ子供じゃん、と返したらもっと笑われた。

それが悔しくて頬を膨らませると、また優しく撫でてくれる。

悪循環だ。

彼だってまだ子供なのに…

その言葉を口に出す事はなかったけれど。



やがて、私の家が近くなると私の足が自然とゆっくりになる。

それに合わせて彼の足もゆっくりになる。

それでも、いつかは家にたどり着いてしまうわけで…

「今日もありがと」

「どういたしまして」

毎回お約束のこのやり取り。

分かれ道まででいいとは言うが、彼は必ず家の前まで来てくれる。

だから必ずこのやりとりをするのだ。

「じゃあ、また明日」

そう言って背を向けようとする赤司くん。

手に持っていた袋をキュッと握った。



「待って、赤司くん!!」

私が呼び止めると赤司くんは振り返って、なんだい、と微笑んでくれる。

「あのっ…そのっ…」

彼が来るまでに考えていた言葉は全部飛んでしまって頭が真っ白だった。

もう、しょうがないと思った。

「お誕生日、おめでとう!!」

そう言って手提げ鞄にいれていた紙袋を差し出す。

「いちお、プレゼント、用意してみたの」

目を反らす。

ああなんか恥ずかしい。

多分今、顔は真っ赤だ。

しばらく、無言が続く。

しばらく、と言っても正確には数秒、だったかもしれないが…

「知って、いたのかい?」

コクコクと頷いた。

「あ、でもっ、全然いいものではなくて、そのっ、あのっ…」

あたふたしている私に彼は近づいて綺麗な指で私の顔を自分の方に向かせる。

「ありがとう」

そう言って、彼は今までで一番綺麗な笑顔を浮かべて、私から紙袋を受け取った。

「名前、プレゼントに値段やもの自体の価値なんて関係ないよ。君がくれたことに何よりの価値があるんだ。だからどんなものでも嬉しいよ。」





彼はいい終わると同時に私を引き寄せる。

あっ、という間もなく唇に触れた暖かく柔らかい温もり。

某然と彼を見つめる私に、彼はにっこり笑っていた。

「これもいただいておくよ」

と言って彼はヒラヒラと手を振り来た道を引き返していった。

彼の触れた唇だけが熱を持って熱い。

また重ねた二人の初めては、とってもとっても甘かった。













初めてお誕生日をお祝いするので、ヒロインちゃんも付き合って初めてってことにしました。
本当は12時にアップする予定だったのに、その時間に爆睡してしまった笑
赤司くん、はぴば!!

2013.12.20



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