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はあ、と暴露ないように一つため息をこぼして隣の美しすぎる恋人を見やる。
ああ、またため息がこぼれそうだ。

「どうかしたか?」

恋人なるイケメンを通り越して美しいとさえ言えるトシは美しい眉を寄せた。
その目つきはかなりがつくほど悪いけれど、その奥にある優しさを私は知っている。
そして、聡すぎる、というか友として一年半、恋人として二年の付き合いになる彼に隠し事など不可能に近かった。
トシに言わせれば私が分かり易すぎるらしいのだけど…
だから、今回も早々に誤魔化すことは諦めた。

「ピアスあけたいの」

「ほう」

うん、想定通りの反応。
この声は確実にどーでもいいと思っている時の声だ。
あまり興味がないんだと思う。
トシとは高校時代から付き合っていて、向こうも私の事が分かるが、こっちだって負けていない。
大体言う前に彼がどう返すか、ある程度のことなら予測できる。
それができるようになるのき3年半など十分すぎるほどの時間だ。

「やめとけ。お前のガサツさじゃ手入れとかしねぇだろ?」

「それでもあけたいの」

はあ、とため息をつくが、そうしたいのはこちらの方だ。

トシは高校に入るまで私の事を知らなかったようだけど、私は彼のことを知っていた。
隣の中学だったトシの女遊びの激しさは私の中学にも届いていたから…
高校に入ってから一年同じ事を続けたものの、何故か私という普通より男子に近しい女の元に落ち着いてしまった。
美しいとさえ形容できる容姿と、大人びたけれど派手すぎない程度におしゃれな服。
それに比べて、大学にジーパンとスニーカーで平気で行ってしまう私。
どう考えても釣り合わない。

「まあ、止めはしねえよ」

投げやりな言葉は私の不安に拍車をかける。
せっかく634mもある某建物に来たのに気持ちは沈む一方だ。
因みに上まで登るのには休日であと2時間は待たなければならず、その中に併設されていたショッピングモールをこうして徘徊している。
最初は楽しかったけれど、疲れた。

「ねえ、やめようよ、ウィンドウショッピング。」

気付けばそう提案していた。

「は?てめぇが言い出したんじゃねぇか」

「うん、でもなんか疲れた」

本当はウィンドウショッピングだって好きだし、洋服を買うのも好きだ。
けれど、友達と買い物をしに行けば彼女たちの可愛さに自信喪失し、洋服を買う気は失せる。
一人で行っても同じ。
結局、周りの可愛い子達を見て自信喪失し、手にとっていた服を戻してしまう始末。
だから、トシとなら、と思ったのだが、彼を長い時間女性服のブランド店の中に連れ込むことは居心地悪そうなトシを見ていると憚られた。

どうせ、彼は何を着たところで何も思わないだろうから全て無駄な気がしてきてしまった。
それでも、可愛い服は私を誘うわけで…

はあ、とため息一つ。

私などトシに似合わないことは分かっている。
それでも、少しでもトシに近づきたいのに…

「とりあえず、アイス食べようよ!」

なんとか笑っていつも通りの感じを出そうとすると、トシがさらに眉を顰めた。
あ、ヤバイ
お怒りモードかも…

「名前」

目つきの悪さが何時もの五割り増し…
声のトーンもいつも以上に低い。

「行くぞ」

そんな言葉と共に手を握られ、来た道を引き返し始めた。

「ちょっ、待って!トシ!?」

私の静止なんて完全に無視してトシが連れて来たのは、先ほど気になっていたブランド店。
その中を私の手を引いてトシはずんずん進んでいく。
周りの人がはけていく。
きっと、トシの機嫌が悪いから怖いんだ。
やがて、トシが止まったのはチュニックコーナーの前。
彼が手に取ったのは春らしい桜色のそれ。

「お前には、明るい色が似合う」

さっきの眉間のシワはどこへやら。
困ったように優しく笑うトシの顔は優しくて、思わず泣きそうになる。

「お前は自信なさすぎんだ。堂々としてやがれ。この俺の女なんだ」

投げやりだけど、優しい言葉。

「はっ、自分でっ、いうかなあ?」

ぽろっと一粒涙がこぼれてしまったのは、私とトシだけの秘密。


トシの選んでくれたチュニックを購入すると、また私の手を引き始めるトシ…
もう、今度は抵抗しなかった。
そうして連れて行かれたのはアクセサリーショップ。
またその中をずんずん進んで…

「ほら、選べよ」

買ってやるから、なんて連れて来られたのはピアスコーナー。

「早くしろ」

恥ずかしそうに頬を染めるトシ。
ああ、本当優しい人なんだから…

「これ、これがいい!」

数分もせずに即決したのは、紫の小さな石があしらわれたピアス。

「なんだ、こんなんでいいのか?」

「うん、だって…」


トシの目の色だから


そう言ったら何故か頭を叩かれて

「んなこと言うな」

って手で顔を背けて言ってたけれど、見えてたよ。
顔、真っ赤。


ああ、もう!




私をこんな気持ちにさせるのはあなただけ


「おいしー!」

某歌を歌ってくれるアイスクリーム店のアイスを咀嚼していると

「ついてる」

と、私のほっぺを親指で拭ってそれを舐めた。
ああ、もう!
これだからイケメンは嫌っ!!


私をこんな気持ちにさせるのはあなただけ


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