どたばたと足音ばかり響く。

どうやら近くの島で海賊が暴れているらしく、それにガープ中将が行ってこいと言う。断る理由もない(というかもう伝えてしまったらしい)ので船に乗り込む。
急いでたから刀は持ってきたっけ、と腰に手を当てると冷たいものが触れた。ああ…しっかり持ってきていた。


着くまで1時間もかからないだろう、と船の中には入らず揺れる海面を眺めていた。するとヒナさんが通り、「酔うわよ」と言葉を残して過ぎて行ってしまった。後ろ姿に向かって「はい、気をつけます」と言葉を投げて一礼した。腰にある刀がカチャリと音をたてる。これからこの刀で、人を切りにいくと考えれば重く感じる。今更だというのに、なにやってんだか。
仕事に情などいらないと、誰かが言っていた。そう思うわけじゃないけど、ほんとに情はめんどくさいものだと思う。いつだって。この憂鬱をどうにかしたくとも、そんな術を持っているはずが無い。はぁ、と息がこぼれた。海面に視線を戻せば横からよっ、と声がかかる。



「なにため息ついてんだ?」

「…ああ、ジャンゴ。久しぶり」



相変わらずへんなキノコつけてるね、と言えば肘で小突かれた。



「…フルボディも、心配してたぜ」

「ん?何かいった?」

「ばかやろう。聞け!お前のことだ!」

「いてっ」



ガスっとまた小突かれ、少し痛かったのでさする。女性にこんな事するやつだったっけ?なんて思っているとジャンゴがはぁ、とため息をつく。



「なに、ため息ついて」

「その言葉そのまま返すぜ?」

「…まぁ、意気込みがないとでも思って」

「なんだ、やる気ねェのか?俺はいつでも大佐の為にやる気は最高潮だぜ…!」



そう言って拳をつくったジャンゴに思わず小さく笑ってしまう。いいね、きみは。なんて感想は嫌味じみているだろうか。



「…相変わらず踊り出しそうだね」

「ん?俺のダンスがみたいってか?」

「今度にしとこうかな。そろそろ皆準備し始めるだろうし。じゃあ、またね」

「…ああ、怪我すんなよ!」



手を軽く振り、その場を後にした。
刀は重かった。




こんな私ならしねばいいのに
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