ぱら、ぱら…と書類に目を通す大佐の後ろの窓の向こう、海を見ていた。


海は自由だ。そうよく海賊達は叫ぶ。私が知っている海賊もそう言っていた。ならばここは縛られているのかとムッとした時があった。そいつはそうだと言った。少しムキになったわたしは「目標をひたすらに追いかける人だっている。自由すぎて何もせずに呑んだくれてるアホとは違う」と私は言い放った事は今でも少し後悔している。失言だと直ぐに気付いた私はどうしたんだっけ。
嗚呼、でもそいつが優しく笑ったのは覚えてる。なんてしょうもない言い合いをしていたのだろうかと今はそう思えた。

でも、具体的な目標なんて私にあったっけ。別にコビーみたいに将校とか大将とかになりたいわけではない。
勝ちたい相手がいる訳でもない。恨んでる相手がいて、殺したい訳でもない。
私は海軍に入って何をしたいのか。
悪いヤツらを捕まえること?…なのだろうか?
ぐるぐるずっと考えているとおい、と低い声が聞こえた。



「あ、はい。すみません」

「…最近上の空だな」



思わず視線が下にいく。最近確かにこんなんばかりだ。鍛錬中にもボケっとしてしまって竹刀で突きを思いっきりくらって吹っ飛んだのは記憶に新しい。黙ってしまった私に大佐が問う様に視線を向ける。



「大佐の目標ってなんですか?」

「…それがどうした」

「…私、コビーが羨ましいんです」



最初大佐に問いかけた質問とはあまり繋がっていないが、気にしてなくて黙って話を聞いてくれた。

私と彼は何が違うのか、彼の様になるにはどうしたらいいのか。
目の前の彼はため息と一緒に煙もはいた。



「お前はお前でいいんだよ」



そう言われて仕舞えば、何も言えなかった。納得した訳ではない。寧ろ答えになってないと言いたい。けど、なんとなく、その言葉は嬉しかった。

ほらよ、と書類を渡され、お礼を言って部屋を出た。


それってほんとに私なのかい
prevtopnext







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -