敵の数が多い。別に苦になるほど強いヤツはいない。だが、数が此方よりも多い上に中々粘り強い。まるで蟻だ。
少し長引いてしまうだろうが、親父が出る程でもない。そんな価値もない。
マルコは舌打ちをしながら波のように押し寄せる雑魚に腕の炎を大きく振るおうと、したその時、時がほんの一瞬、止まったような気がした。
何かが破壊される大きな音。
痺れと、脳みそが少し揺れるような目眩がし、意識が飛びそうになるのをなんとか堪えた。
________………
静寂が訪れた。
敵味方関係なく次々と倒れていく。目の前にいた敵も白目を向いて倒れているのをマルコは静かに見下ろした。
ふ、と周りを見渡して立っているのは、隊長達ばかりだ。
「ッ、くそ、なんだ?!」
「…覇気だよい」
頭をおさえながら吠えるエースにマルコは炎を仕舞いながら言った。その言葉にハルタは「親父…じゃなさそうだけど」と呟く。
未だピリピリとする空気にため息をついた。嫌な気しかしない。覇気によって船が少し損傷しているのをみて頭を抱える奴もいる。
そんな中、サッチが軽く笑いながら上を見上げる。
「おいおい、空まで晴れちゃってるぜ」
「…どうする?」
「この調子だとあっちの船長さんも白目向いて泡吹いてんだろ」
「だな」
「ん、で?どうするよ、マルコ」
「まぁまずは起きそうなやつ起こしてそこら辺の奴ら海に投げとけ。俺らは親父ンとこ行ってとりあえず、」
「なぁなぁ」
ビスタやジョズが敵を海に放り投げ、サッチとマルコが話し合っている所にエースは手をあげた。
「なんだよい」
「気の所為だったら悪ぃんだけどよ、オレ、アイツの声が聞こえたような…」
「ア?…あのなァ、エース。いいか?お前今日の晩飯アレだぜ!って言われて伝わるか?お前は肉だと思うかも知れねぇけど野菜の塊の事かも知れないんだぞ。つまりな、アイツっつわれて…伝わ、る…か………」
ゆっくりと動きを止めて言葉を失うサッチにマルコは首を傾げる。
そしてサッチは鰐のように口を大きく開け、固まった。
「どうした?」
「…………」
サッチはゆっくりとポケットに手を入れ、クシャクシャの灰色の紙を取り出した。シミを広げ、唾をのみこんだ。
「医務室だ!!」
響くカーテンコール
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