次に目を覚ましたら、また朝になっていた。そして脳内を整理しているうちにエースさんが訪れた。
はやいですね、と返せばまぁ、と短い返事がかえってきた。


「飯と、湿布だ」

「ありがとうございます」


手渡されたスープは温かった。食べたいという食欲はあるのですぐに食べたいのだが、利き手は手錠でベットヘッドの近くでしか動かせずとても食べにくい。
スプーンを使わずに飲むように食べた方がいいのかと考えているとゴホン、とエースさんが咳払いをした。

ふと目がそちらへ向くとエースさんは相変わらずそっぽを向いていた。ただ、身体だけはこちらを向いていて何か言いたそうだ。


「あー…」

「?」

「…その、俺からの謝罪として今日一日世話役になるからな」

「……?ありがとうございます?」


未だに顔だけこちらを向いてくれないエースさんに、まだ理解はしてないがお礼を言う。
その後もあー、とかうーとか唸っているエースさんは奇妙である。大丈夫なのだろうか。

思わず凝視していると、バッとエースさんが突然立ち上がり頭を90度に下げた。


「すまねェ!!!」

「ぇ、エースさん?」


そのままの姿勢でエースは大きく空気を吸った。突然の大声にかいへいは固まる。


「気づくのが遅くて、身体に傷を負わせちまった!この通りだ!許してくれなんて思わねェけど、オヤジは何も…」

「っあの、エースさんエースさん!やめてください、別にわたし」

「別にもクソもねェ!だからな!俺からの謝罪として今日一日は世話役だ!」

「あっはい…」


ピシャリと言われてしまい思わず返事をしてしまった。
とりあえず顔を上げてもらうと、そこでやっと目があう。


「そのスープかしてくれ」

「?どうぞ」


片手でスプーンごと渡すと受け取ったエースさんはスプーンで小さな具が入ったスープを掬う。湯気が立つそれを少し冷ますように息を吹く。

そしてそれをかいへいの口元へ運ぼうとする。


「え、ちょっとまっ…」

「あー」

「ひとりで…」

「あー」

「……ぁ−」


渋々口を開けてスプーンを迎え入れて飲み込むと、エースさんは満足そうにニコニコしていた。

その時気付いたが、この人は笑顔がとても似合う人だと思った。










朝ぼらけにミツバチ
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