かいへいさんの刀は、まるで舞のようだというのが第一印象だった。

ほぼ独学らしく正しい扱い方ではなくて、特別綺麗という訳ではない。でもどこか大胆で豪快でシンプルさもあり、なんだか美しいと思った。私はそれに、見惚れた。



そんな彼女が昨日、亡くなったらしい。

あまり接点があったわけじゃないけど、他人ではない。寧ろ年が遠くない女性同士という事で話しやすかった。



「また誤字だらけだ。やり直せ」

「…すみません」



スモーカーさんに書類を返される。



「いつまでウジウジしてんだ、たしぎ」

「…はい、切り替えれるよう頑張ります……でも…かいへいさんは、ほんとに…いい人で…」

「今更何考えても戻ってくる訳じゃねェんだ。他の奴にも影響がでる。シャキッとしろ」

「…はい」




スモーカーさん、気づいてないのかな。
いつもより眉間に皺がよってたり、煙草を吸う回数が多かったり。

スモーカーさんだって、表情暗いじゃないですか。













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『大佐の目標ってなんですか?』





そう問いかけてきたかいへいは苦しそうな面をしていた。
そのあと何て答えたかは忘れた。ただ、来る前よりはマシな面になっていたのでまぁ、良かったのだろう。励ましとでも思ってくれれば、いい。

迷いからは少し逸れることができて、自分らしく突き進めるんじゃないか。コイツは大人しいが中には熱の塊がある…きっと、成長してって、いつか立派になるのだろう。そう思った。


それから本部を離れて元の場所に戻り数ヶ月後、大将から電話がきた。



「どうしたんですか」

「昨日かいへいちゃん、頑張ってて、二億超えの船長率いる海賊船一つ潰したの」



いきなりアイツの話をし始めた大将に思わず眉間に力が入る。向こうのでんでん虫はきっと眉間に皺がよっているだろう。
まぁ、あの階級で大きな海賊船一つ潰せたのは大きい。でも、それだけで電話なんていらないだろう。それとも自分の元部下が可愛いくて仕方がないのだろうか。



「…はぁ。なんの報告ですか、これ」

「その船と一緒に、沈んでったのよあの子」

「……は?…あの、遠回しに言わんで下さい」

「かいへいちゃんが死んだ」




一瞬全ての音がシャットダウンされ、ぽろっと咥えていた葉巻きから灰が落ちて意識がすぐに戻り、目を伏せた。

比喩かと思った。だが、そのままらしい。言葉通り、沈んで、しんだのだ。


ああ、あの時、ずっと迷わせておけば、死ななかったのかもしれない。そんなことは本望ではないだろうが、死に急いでは意味がないだろうが。



「…あのバカ、」












伝えてないことがあるんだ
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