Overwrite in 2005
暗い部屋 オレンジの香り 乱れたシーツ


しゅる と抜け出したのは男
黒髪に程々に焼けた肌 程々に整った顔 程々に均整のとれた体つき

シーツに丸まった女を見やる
金髪に新雪の白肌 寝ているとあどけない顔 触り心地の良さそうな体つき


家は朝の光に照らされ 鳥の鳴き声も聞こえる
郊外のメルヴィン・フィリス所有の一軒家
二人の生き物 内訳は一匹のヒトと一匹の悪魔が住んでいる





きっちり寝間着を着た彼女
御年八十歳 賢者の石のレプリカによる不老諸々で身体機能は十代後半から変わっていない

彼女と一緒に居て数十年と経ったが 最初に会った時から可笑しな人間だった

ヴィーラの血でも流れているかの様に 妙にヒトを惹きつける
それも彼女にとって悪い方向に
かの帝王もそうだった
彼女が何故か抵抗しなかったから見守っていたけれど
どうやら彼女に魅せられた者は欲望を増幅させてしまうらしい



"色欲"

それは彼女を傷つけ惑わせ救いを与える


帝王は消えた
今度こそ彼は死したのだ!
ぐるぐると混乱しただろう彼女の思考

覚えてもいない父を殺した最終爬虫男
私は恋人だったのか妻だったのか妾だったのか……… 彼女にはどうでもいいことだろう

三人の孫に曾孫が三人 異父兄弟の息子が二人




もぞり と動く塊 白いワンピースの寝間着
感情の欠落した顔 いつかの夢を見た後の顔

 "メフィストフェレス" と彼女は喚ぶ

メル と微笑みながらいつもは呼ぶ癖に こんな時だけ彼女は






思い出した事柄から逃げる為に同種のことを繰り返す

上書き それは彼女の唯一の逃げ道


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