リスノワール・ドロップス 【31 Apr.】



「ねぇ 今日英語のテストってあったっけ?」


私は あの日にそう話しかけたんだ──



リスノワール・ドロップス 【31 Apr.










友人 そう 本当に信頼の出来る友人は 年をとるに少なくそして出来にくくなるものだと 前に誰かに言われた気がする
生涯の友は高校の時に出来やすい とも言っていた気がした




中野 怜子 高校二年生 17歳

比較的仲が良かった生徒とは全員が同じ文系の筈なのに完全に別のクラスになってしまった 少々不運な女生徒
男子が少々幼いだけで 知人さえほぼゼロだっただけで あんまり変わり映えのない生活

尤も 嘗てのクラスメートが恋しくなるのは多々あり だが




そんな私に同じクラスの友人が出来た

絵画に造詣が深く運動も出来 漢検準一級 他英語等にも精通し 男子とも臆面なく話せる

上記の条件が当てはまる彼女と友達になったのは私は運が良いと思っていた
基本的に運が悪いことの多い(それをナカノクオリティと私は呼んでいる)ものだから 珍しいものだと喜んですら……

だから………そう………………




「この頃のラブホってスゴいよねー」


そう言われたとき ファッ!? って叫んでしまった私は何も悪くないと思うんだ…………








いや当然の様に言われましても!
え? そうじゃない?みたいな顔されましても!!

教室でネットスラング(しかも発祥は┏(^o^┓)┓系だ)を叫んだ私を生暖かい視線が包んだのは 私の不運を象徴するかのようだ  悪くない!私は断じてわるくなぁぁい!!!


第一入ったこともない幼気な腐女子乙女に何をお求めに!?
それから彼女はべらべらと だが秘密を共有するかの様に それ以上に自慢気に語っている
………相手は既婚者 奥さんは海外赴任中 へたれ ××××した………


せめて…… せめて既婚者は止めておけと そう忠告したわたしを彼女はとても不思議そうに見た

「大丈夫だって 海外いってるんやって
てか援交ちゃうよ? お金のやり取りなんてないよ?」





───その どちらかというと"可愛い"と言うより"エキゾチック"に分類される顔
その肌荒れが治り成長したら"中程度の人の群の中で三番目にきれい" 程度になるだろう容姿
細くはないが適度に筋肉質で出るところは出ている"抱き心地の良さそうな" 体型
皆に人気があり それでいて騒がしくなく 落ち着きもあり正に"頼れる"存在

私は神の采配を呪おう



嗚呼呪わしくは我が容姿!

私は二者面談で やんわりと遠回しに"君は目つきの悪さで損をしている" と告げられたばかりなのだ  自覚はしてたけどせんせー酷くないですか?

確かに男子が無駄に広がっている昼休み中の廊下において かなり目つきを悪くして歩いてのは事実だ
そりゃぁそうだろう だってホント邪魔なんだもん

それに機嫌悪くなくっても 目つき悪いのは変わらないし
何故何もないのに笑わなきゃならないのさ!






「え? でもヤったことは……」
モチのロナルドウィー○リーであるよね? の意味を含んだ目線を私にやりながら彼女は話を続けた
君は私に一体何を期待してるんだ? ナニを!!

……若干意識を飛ばしていた私は 結局嘘を吐くことも出来ずに曖昧に微笑んでいる

「ははは まぁそれなりに」
とこの際返答は無難な選択をした (ないよ 何でそんなことを聞くの穢らわしい 私を同じにしないでよ)

「やんなー でさ あたしなんかそいつに……平たく言うと肌着?渡されてんけど」

「はぁ?」

「いやさ それしかも教えてないのにサイズぴったり  びっくり
だってさ あたしアンダー75やよ?  普通って65か70くらいやん 余計怖いわっ」

「うわぁ キモいねそれ!」




けらけらと笑う彼女を私は憐れみたかった
だが私にはそれ以上に 気持ち悪い生物に見えたのだ

デートDVによる精神的暴力を受けていた傷は そんなに浅くなんかないんだよ?
それに不倫ってどんな形であれ人を傷つける行為だってこと 君は分かってないんだね
下手に某巨大掲示板群を泳ぐから 家庭板とか色々覗くから 話半分でも私には苦悩とかが伝わってくるんだよ

その言葉を飲み込んで私は得意の曖昧な微笑みを発動した
嗚呼哀しき我がこゝろ!





定木 音葉じょうぎおとは
皆は彼女を"じょーお"と略して読む

私にはそれが"じょおう"と "女王"だと聞こえて仕方ないのだ


皆に慕われ 頼りにされる彼女

私も彼女を頼りにする他ないのだけれど だけど 気持ち悪くて情けなくてしかたがない
だが自分に問題があるのだろうけど  目つきしかり 態度しかり




私は昼休み がりっと小さくなりかけた飴を珍しく噛み砕いたんだ
途端 苦みのある甘さが広がり 咽せ返る様なハーブ独特の香りが私を羽交い締めにした

この飴を好む人には 私はあまり会ったことがない  少なくとも同年代では


皆甘美をとうに超越したカラメルキャンディや 香料と合成甘味料 着色料によって形作られるフルーツキャンディを所持している  が 私にはそれらはほんの少しだけで十分なのだ





黒い そして茶色くほんの少し紫がかった飴

クロユリと似た色 私の好きな花

白百合と相反する色をしたあの花は 私を表しているかの様だ


クロユリの花言葉は "恋""呪い""復讐"
白百合の花言葉は "純潔""無邪気""無垢"



"ポップな色合いのキャラクターのついた色褪せたハンドタオル"
前述の"キャンディ"

そして

"手ずから刺繍したアイロンのかかったハンカチ"
"十数種類のオーガニックハーブが配合されたキャンディに 缶入りドロップスの薄荷味"



女として 明らかに私の方が勝っているのにと他ならば騒ぐ心も 明らかに私が不利なのに気付いているらしい

あらあら 綺麗にしたスケートリンクがごとく平坦でぴかぴかで冷たい我が自尊心よ!








その後も私は彼女と付き合い続けた

段々猥談であるのをほのめかすような話題もさらさらと出てきたが 別に問題はない
行為そのものは別にまだいいのだ  禁忌的関係がだめなのだ(私の中で)


そう 実は既に私たちの高校生活は幕を閉じている
彼女は訴えられることもなく 今は大学生なのだが やはり未だ遊ばなそうに見えて××××するらしい
年上ばかりを墜としているらしい  それにあいはあるのか あるのか………


いつか おとこに刺されるよ

そう周りと笑っていたのが懐かしい
苦笑していた彼女の目が虚ろだったのが ただ/\未だに私には不思議なのだ
処女でありながら 体のみは清らかな乙女でありながら 精神から行為から崩れた私には 自分から壊し捨ててしまう彼女の存在が やはり不思議なのだ


ねぇ 誰か教えてくんない?

: NOVEL : TOP :
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -