徳川ファミリー偽造

記念祭は、1日がかりで行われ、午前中はお城周辺で、巫女舞やら演舞やら火縄銃発砲やら、近所の小学生の時代劇「雲竜寺の戦い」が野外劇場で行われ、市長の家康の父の話で締めくくられる。

暗くなってからは、屋台が賑わうが、藩士の子息らとその子息の紹介された者だけが、徳川家の迎賓館で行われる記念祭に参加を許される。

迎賓館は明治に建てられた建物を改装したもので、すごくレトロな雰囲気が漂う。

一階は旧ダンスフロアで、立食パーティーが行われ、二階では展示会がなされる。

家康の両親が、入り口に立ってゲストに一人一人挨拶をする。

「おばさま、おひさしぶりです。」

いつもより派手に着飾った慶次が政宗と登場する。

「前田さん、しばらく見ないうちに綺麗になったわね。」

と家康の母の於大が微笑む。

「まあ、そちらは?」

「伊達です。」

と政宗が完璧で女性への高感度は絶大の営業スマイルを向ける。

「前田さんの新しい彼氏ね。どうぞ入って。」

と言われ、政宗は何とか第一関門をクリアする。

すると慶次が、誰を見つけたのか

「ちょっと、先に行っててよ。政宗。」

と急に焦り出す。

視線の先に、慶次が最も頭の上がらない人物、まつがいたのだ。とっさに政宗の前に立ったが、目ざとくそれを見つけ、こっちに向かって歩いてくる。


「慶次!!今隠した人は誰です!?」

「あー友達だよ、まつ姉ちゃん。何でこんなときまで制服でビシッと決めてきちゃってんの?」

濃紺の婦警の制服に、いつも通りのミニスカ。
でもまつはいつだって隙がない。

「私は、あなたとは違って遊びに来ているわけではないのです!!
友達なはずはないでしょ?ちょっと年上すぎませんか?慶次。」

「もーごちゃごちゃ言わないでよ。まつ姉ちゃんは、トシみたいな男じゃないと認めないかもしれないけど、あれはもう絶滅危惧種だよ。」

「だから犬千代様が一番なのです。って、慶次!!どこへ行ったのですか!?」

まつがのろけている間に慶次は人ごみの中に姿を消した。


一方、幸村は三成と、なぜか元就は元親と屋台巡りをしていた。

元就が記念祭に行くと知って、元親も急遽行きたいと言い出し、今に至る。

「次は射的屋に行きたいでござるぅ〜!!」

綿飴を片手に幸村ははしゃぐ。

「......」

三成は半ば強引に幸村の付き合わされる形であちこち振り回されているが、やはりまんざらでもない顔をしているのだった。

綿飴を持っていない方の幸村の手は、しっかりと繋がれている。

「姉貴もちょっと明るいのとりもどしたんだな。」

としみじみ元親が言う。

「貴様はどうなのだ?まだあの柄の悪い連中とつるんでいるのか?」

「柄悪いって...一応ダチだからよ、つるんでるっちゃ、つるんでるけど...。」

「我は...前の貴様の方が良かったぞ。」

「えっ!?」

ボソリと言われたが、それははっきり聞き取れた。

「な、何でもない!!あまり真田を困らせるな!!」

フイとそっぽを向いてしまう。

元親はポケットのいれたままの懐中時計を握りしめた。

姉に渡そうか...とさえ思う。

その瞬間、幸村のケータイが鳴る。
慶次からだった。


『幸ちゃん?ちょっといろいろピンチなんだけど迎賓館まで、石田クンと来てくれないかな〜』

「げ、迎賓館でござるか?」

幸村は凍りついた。
迎賓館に行けば、家康の両親がいる。どのツラ下げて元彼の両親に会えるのか?

「そ、某、迎賓館には行けないでござるッ!!」

『え〜まつ姉ちゃんがね、今一緒にいる政宗が同級生の兄だって言っても信じてくれないからさー、石田クン連れてきて証明してよー。』

「わ、わかった...」

頼まれたら断れない性分なので、承諾はした。

元就が一緒に来てくれれば、幾分かマシだろうが、元就といる元親はそれは楽しそうで、一緒に行こうとは言えない。

「そ、某用事を思い出した故、ちょっといってくるでござる!!ほら、三成殿も...」

と必死に三成の手を引っ張る。
さっきの電話で何かがあったと察してはくれたみたいだが、怪訝な顔をされた。

「何かあったのか?」

「実は...」

幸村はさっき慶次から頼まれたことを正直に話した。

すると、三成の顔が険しくなる。

そんな馬鹿なことにつきあえるか、と腹をたてたのだろうか。

気まずい雰囲気のまま迎賓館の前にたどり着くと、幸村の足が止まる。

「やっぱり、某無理でござる。一体どの顔して...」

「おっ!真田に三成ではないか、そんなところで何をしてるんだ?」

ひょっこり現れ、いきなり声をかけてきたのは家康だった。

主催者の子息らしく、きっちりと黒のスーツを着ていた。

「何故、ここに?」

「ワシは、ああいう堅苦しい雰囲気は苦手でな、ちょっと外の空気を吸いにだ。それはそうと、早く前田のところへ行ってやれよ。ちょっとした騒ぎになっているぞ。」

家康は苦笑した。

「入りにくいのはわかっている。ほら、入れよ。三成も。」

と扉を開けてくれた。

三成が中に入ろうとした瞬間、家康に腕を掴まれた。

「ワシはまだ真田を諦めていない。」

と耳元で囁かれ、パッと手を離されたときはいつもの屈託ない顔に戻っていた。

「あ、幸ちゃん、ホントに石田クンも来てくれたんだー。」

心底困り果てた顔の慶次が幸村のもとに飛んでくる。

「ほら、まつ姉ちゃん、政宗は石田クンのお兄さんなんだから!!」

「Hey brother 遅かったじゃねえか。」

と政宗も態とらしく言う。

「まつ殿、確かに政宗殿は三成殿の兄上なのでござる...」

さすがに幸村からも言われると、まつは認めざるを得なかった。

「わかりました。でも、慶次、今日はなるべく早く帰ってくるのですよ!!」

まつはそれだけ言うと、自分の持ち場に戻らなければいけないので
迎賓館から出て行った。



三成は不機嫌極まりない顔で、政宗を牽制した。

「なぜ、わざわざ幸村を呼び出した?あの婦警にあやしまれたからか?」

政宗は不敵な笑みを浮かべただけで、何も答えなかった。

「それでは、某はこれで...」

「えー!!もう帰っちゃうの?」

とりあえず目的は果たしたのだし、と
そそくさと帰ろうとする幸村を慶次は引き止めた。

「上で展示やってるし、せっかくだから見ていきなよ。」

慶次の言う展示というのは、
例の出資者の家に代々伝わる品の展示のことである。

「い・・・いいでござる。」

「えーなんでだよー??
 幸ちゃん、古いもんとか結構好きじゃん。
 だって、屋台行きたいし、向こうでやってる演舞も見たいのに
 政宗ったら、全然付き合ってくれないしー。」

「それは・・・そうでござるが・・・」

「よければ、俺が案内してやろうか?
 屋台みたいな、俗っぽいところは俺みたいな男が行くと
 浮くしなぁ・・・。」

「ちょっと、石田クン、貸してよ。」

強引に三成の手をぐいぐい引いて慶次は連れて行こうとする。

「やめろ!!」

一度は慶次の手を叩いたたが、それで諦める慶次ではない。

「えっ!?それは・・・三成殿がいいなら、某は・・・」

「じゃあ、決まりね!!行こう!!
 私さ、こういうところ退屈で嫌いなんだよね。」

あっけなく慶次は連れて行かれてしまった。


つづきます。。







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