記念祭の当日は祝日だった。幸村は部活の練習が午前中にあり、帰ってきた後、シャワーを浴びた。

ザビーが亡くなってから、しばらく部活動停止状態になっていたが、猛獣が捕まったことにより、部活は再開された。


シャワーを浴びた後、元就からのメールがあり、記念祭に行く前にどうしても話があると綴られ、了承すると数分後に元就が来た。


「元就殿、話とは...?」

長い髪をアップに結いながら聞く。

「前田が伊達から聞いた石田の話なのだが...やはり、いい。」

言わない方がいいかもしれないと元就は口ごもる。

「え?何でござるか?教えて下され!!」

「伊達には聞くな。我が、前田に責められる。」

「はい...」

「石田が前に付き合っていた女をしっているか?」

「源次郎殿でござるか?」

口にしたくない名前だった。

「兄弟で取り合ったらしく、わだかまりが今でも残っているそうにござるが...」

「先に付き合ったのは伊達の方らしい。それに嫉妬した石田が、源次郎にあることないこと吹き込んで、結局伊達とは別れたらしい。」

「でも、それは政宗殿から見た一方的な言い分ではござらぬか!?」

なぜ、元就はこんな話をするのだろう。

「まあ、そうかもしれぬ。伊達が人の感情を操るような奴でなければな。」

「三成殿が正直なところ、源次郎殿のことを未だに想っておられるのは、某とてわかる。しかし、それでも某は三成殿のことをお慕いしておるのだ。」

「我は別に石田のことを悪く言うつもりはない。ただ、あの通り伊達は何を考えているかわからぬ奴故、釘を刺しておきたかっただけだ。」

とはいえ、三成の知りたくない部分を知ってしまたような気がして幸村は落ち込んだ。

その時、電話が鳴った。

表示を見ると、家康の家からかかってきていた。家電からなので、おそらく家康の母からだろうが。

「元就殿、出て下され!!
おそらく於大殿からでござる...」

元彼の母からの電話を気まずくてとれないのはわかるが、かと言って自分がとるのもおかしい。

しかし、幸村が顔を真っ赤にして、震えているので、元就はしぶしぶ電話をとってやった。

「ふむ。承知した。
やはり真田でなければ話が通じん。出よ。」

と受話器を渡される。

みるみるうちに幸村の顔が青くなっていった。

「おかしいでござるな...。今朝、そちらの家の方が、取りにこられると聞いておりましたので、渡すよう弟に頼んだのですが...そんな、はずは...確認いたします故、しばしお待ちを。」

受話器を乱暴に置くと、幸村は急に怒ったような顔をして、隣の元親の部屋へ殴り込んでいく。

ノックもせずに、いきなりドアを開けると、

「元親ァ!!」

と怒鳴り、つけていたヘッドホンをはたき落とした。

弟のシバキ方は、亡き父親そっくりだと元就は思う。

「何だよ、いってぇな」

自室で音楽を聞きながら、ネットサーフィンをしていた元親はめんどくさそうに幸村を見上げる。

「時計をどこにやったのでござるか!?まさか、もうすでにねっとおーくしょんとやらに出したのではあるまいな!!」

学園の出資者の家を中心に、それぞれの家に代々伝わる品を記念祭では展示することになっている。
そのため、幸村は家の隣にある蔵から、先祖の懐中時計やら、アクセサリーやらを、
徳川家の使用人が取りにくると言うので、箱にいれてリビングに置いておいた。

しかし、受け渡しの時間がちょうど幸村の部活の時間とかぶったので、今日は家で過ごすと言っていた元親に頼んだのだ。

佐助は今日は、朝から外に出ているし、朝にはあった懐中時計がないとすれば犯人は一人しかいない。

「そんなことしねぇよ。」

元親は心外だという顔をすると、引き出しから例の懐中時計を出して幸村に見せた。

「これは俺のモンなんだよ。親父が言ってたぜ。これは代々長男が引き継ぐものだってな。」

いつものようにふてくされた感じなのに、"親父"と口にしたときの元親の顔はさみしそうで。

「別に徳川殿に差し上げるわけではない。貸すだけだ。」

自然と幸村の言い方も優しくなる。

元親はしぶしぶ懐中時計を渡した。

「真田、石田からメールが来ているぞ。」

と幸村のケータイを持った元就が現れる。

「ゲッ!!毛利、いたのかよ!?」

「失礼な奴だな。さっきから真田の家におるわッ」

元親は恥ずかしいところを見られたとばかりに顔を赤くした。






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