「それでさ、その忍者男が思ったよりいい奴で一文なしな俺に金を貸してくれたんだよ。」
「ふーん、それで無事に面接を受けられたのか。」
「イエス!」
「お前んちの玄関でカード見つけた時は、少し心配したけどな。」
「俺も忘れるとは思わなかった…。でもそれでまたなんか食べに行けるじゃん。」
「ああそうだな。んで、お前そいつにいくら借りたんだ?」
「諭吉さん1人。お陰で今俺の懐は暖かいぞ。」
「げ、そいつ金持ちだな。見ず知らずの他人に簡単に一万貸すとか。」
「忍者って儲かるっぽいな。俺も忍者やればよかった。」
「そいつに今度金返すんだろ?まさか利子付きとかいわねーよな。」
「三倍返しって言われた。」
「は?」
「諭吉さん3人連れて返しに行く、今度。バイトが無事受かって給料もらってからだけど。」
「いやいやいや…、おま諭吉さん3人って何週間分…いや何ヶ月分の食費だよ!諭吉1人いれば十分だって。」
「いやでも実際あのタイミングじゃそのくらいの価値はあると…」
「あのなあ、考えてみろよ。俺達は貧乏人で、そいつは金持ち。日々の食にも困る俺達が金持ちに無駄に献金してやる必要なんてどこにもねーだろ。連絡先とか住所とか教えちまったか?」
「いやそれは教えてないけど。」
「よし、ならその金はお前のだ。返す必要はねぇ。」
「えー、でも必ず返すって言っちまったし。それに忍者いい人だったし。」
「馬鹿。人に一万貸して三万請求する金持ちがいい奴な訳ねーだろ!」
「そうか?俺は面接に間に合っただけで忍者様々だけどなあ。」
「…お前って悪徳商法にすぐ騙されそうだよな…。お人好しだし。無駄に高い変な壷買ったり新聞何社も取ったりとかしてないか?」
「失礼だな!そんな間抜けなこと俺はしねぇよ!」
「まあ、このゴーストタウンにはそんな押売りや勧誘もこねーからな。今日もこの辺で怪人出たし。」
「あ!そうそうZ市で蚊の大量発生とか言ってたけど、怪人も出たのか。大丈夫だった?」
「ああ、なんかその怪人が蚊の親玉っぽくてよ、そいつ倒したら蚊もどっか行った。」
「一撃で?」
「ああ、一撃で。」
「へーやっぱりサイタマが倒したのな。さすが。でもちょっと手こずったりしなかった?」
「いや別に。いつも通りだったけど。なんで?」
「帰ってきた時、サイタマが焦げ臭かったから。炎系の攻撃でも食らったのかと。」
「あーそれな。あいつだよ、あいつ。なんだっけ。名前忘れたけどサイボーグっぽい奴がいてよ。そいつの蚊取り閃光の巻き添え食らったんだ。」
「サイボーグって…。それもしかしてジェノスのこと?」
「ああそうそう。そんな名前の奴。知ってんのか?」
「帰り道に会ったんだよ。なんか身体バラバラでヤバそうだったから途中まで背負ってってやったんだ。」
「あー、野暮用ってそれか。遅刻してくるから怪人と戦ってでもいたのかと思ってた。」
「あ、そういえばその時怪人も倒したな。なんかプテラノドンみたいな変な鳥。」
「一斬りで?」
「うん、一斬りで。」
「サイボーグになんか言われなかった?」
「いや、別に。サイタマはなんか言われたの?」
「…弟子にしてくれとか言われたんだが…。その内あいつ家に押しかけてくる気がする…。」
「弟子かー。別にいいじゃん。サイタマ強いんだから。」
「俺、弟子なんか募集してねーし。」
「いいと思うけどな。師匠になったら何かいいことあるんじゃね。弟子にクソ暑い日にアイス買ってこさせたり、でアイス溶けてたら殴ってくるし、変な所で師匠面するし、でも修業容赦ないし、実戦で学べとか憂さ晴らしに近いし、あんた教える気ねぇだろってくらいだし、それに…」
「おい!途中からただの愚痴になってんぞ!なんだそれ、体験談かよ。お前の師匠ひでーな。」
「そうひどい師匠なんだよあの人は。サイタマは弟子に愚痴られるような師匠になるなよ。」
「だから弟子なんかとらねーっての。」


(モスキート娘襲来日、午後7時、ゴーストタウンにて)

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