夢のトリオ結成
『………はっ!?』
目が覚めると私はベッドの上で1人横になっていた。何の変哲もないホテルの一室である。おかしいな、さっきまでボンゴレの皆さんに囲まれてこの世に生まれたことを後悔していたはずなのに。
白「あ、寅チャン起きた?」
白蘭様も至って普通だ。普通どころかコーヒー片手に夜景を眺める姿はやたら男前だ。健康サンダルさえ履いていなければ完璧なのに。
もしかしたらさっきの出来事は全部夢だったのかもしれない。そうだよね、人間そう簡単に生死を賭けた選択を迫られることはないんだから。妙にリアルな夢だったなぁ。今も体中汗だくだよ、自分の体なんかすごい湿っぽくてヒく。まるで味噌汁のワカメだ。それにしてもいつからが夢だったんだろ。おっとそんなことよりも明日の起床時間でも確かめないと!
白「やだなぁ夢じゃないよ寅チャンとぼけちゃって」
『は?いやいやいや夢ですよ。たった今私の中で夢という結論に落ち着きました。てかさりげなく人の心読まないでくれます?』
白「さっきは大変だったよねー、綱吉サマが押しかけてきた時はさすがの僕も塩と砂糖を間違えたよ。おかげでコーヒーがしょっぱいよ」
『い…いやいやいやだから夢でしょソレ!?心を読むだけでなく夢の中まで覗くなんて!ホント白蘭様って趣味悪い!』
白「だから現実だよ、その直後錯乱した寅チャンは何事か呟きながら眠るように気を失ったんでしょ。ちなみに僕の趣味はペットボトルのフタに顔を描くことだからそこんとこ間違えないでもらえるかな」
『じゃあ白田・白江入江事件も現実…!?白蘭様ひとりで一体どうやって切り抜けたんですか!?』
白「何その書いて字のごとしの事件名。銀髪の子が複雑な家庭事情がどうとかって勝手に推理してたから、それに乗っかって色々と複雑っぽく説明しといたよ」
『白蘭様…!!素敵!いつからそれほど役に立つ嘘がつけるようになられたの!?』
白「寅チャンてば褒めても何も出ないよ。ていうかソレは果たして褒めてるの?」
『これでひとまず安心ですね!いやぁー安心したらお腹空いてきましたよ、白蘭様フルーツ盛り合わせ頼んでください』
白「何事なのその急にでかくなる態度は。あ、そうそう次にボンゴレに会うときは気を付けてね」
『は?なんでですか?』
白「うん、僕らの関係の話に戻るけどさ、寅チャンは僕の親が再婚した相手の娘のいとこなんだけどその娘が不運の事故で死んでしまって実は親に虐待を受けていた寅チャンを再婚相手が娘代わりも兼ねて引き取ることになり寅チャンは前の苗字のまま虐待の痛みを背負いながら僕の兄妹として生きることを決めたんだ……って設定だから注意してね」
『いや複雑に絡み合いすぎて3回は聞き返さないと理解できません。それはもはや兄妹ではなく偶然血の繋がりのある他人です。それに何ですか私のその悲劇の主人公っぷりは。私のどこにそんな切なげな過去が感じられるって言うんですか。皆さんソレで本当に納得してました?』
白「綱吉サマだけは両腕を隙間なく洗濯バサミに挟まれたみたいな顔してたかな」
『ほらァァァ!!綱吉様は勘がいいから疑われてんじゃないですか!白蘭様の話には理由もなく疑いたくなる香りが漂ってんですよ!』
白「漂ってないよ僕の香りはアロマだよ」
『あれそういえば入江隊長は?』
白「正チャンなら売店に行ったまま戻らずだよ」
『いやそうじゃなくて隊長もなんか次男ってことになってんでしょう。ていうかどこまで冷えピタ買いに行ってんだあの人』
白「あぁ、そういうことなら正チャンは生き別れになった僕の実の弟で、違う苗字を名乗って孤児として育ち最近再会したってことになってるよ」
『…どうやったらそんな昼ドラのような相関図がポンポン出てくるんですか。こんなカオスな家庭環境で兄弟関係が崩壊しないなんて奇跡ですよ』
白「え、でも感動するでしょコレ。全米が泣いたことにして映画化しようよ」
『嫌ですよそんな五流映画』
白「プロジェクト始動前から五流決定済みってなかなか辛口な評価だね」
『プロジェクト始動前から勝手に全米泣かすのもどうかと思いますよ』
正「ただいまー」
『隊長!今までどこ行ってたんですか!?あんたがいない間大変だったんですから!私白蘭様と血の繋がらない兄妹になっちゃったんですからね!!』
正「えええええ似てない兄妹だね」
白「いや注目すべき点はそこじゃないと思う」
『隊長だって兄の白蘭様と生き別れ孤児になったことになってんですよ』
正「僕も入ってんの!?ちょ、普通おかしいでしょこんなに似てない3兄弟」
『隊長はどんだけ親の遺伝子の心配してんですか。だいたい私は元は二人と他人って設定なんだからいいでしょう。お二人はよく見ると鼻と口の間にある溝の形がそっくりなんでその辺クリアです』
白「そんな鼻と口の間にある溝の形だけクリアしても」
『白蘭様の外人顔は全部整形ってことで話はつきますが隊長のメガネは………突然変異で8才の誕生日に朝起きたら生えてた設定ですべてが片付きますね』
白「待てよ。全部整形ってその頃の僕はいったい何がしたかったのさ」
正「あの…メガネは僕から生み出されたわけじゃないんだよ常識的に。ていうか僕とメガネってそれほど切り離せないもの?君にとっての僕って何なの?9割くらいメガネなのかな?むしろメガネが本体なのかな?」
『では私は自室に帰らせていただきます。一応病人なんでさっさと寝ます。お二人もさっさと寝てさっさとイタリアに帰って下さいねおやすみなさい』
白「おやすみーまた明日ね!」
正「二人とも微妙に会話がかみ合ってませんよ」