落ち着かない夜
白「寅チャンそろそろ温泉行こっか」
『駄目です。下手したらボンゴレの皆様と鉢合わせになるかもしれないので今日はこの階からなるべく出ないで下さい』
白「えぇーソレって軟禁じゃない?えげつないよこの子」
『うるさいですよ、さっきから入江隊長パシってかれこれ38回も売店へ走らせてるくせにどれだけ充実した軟禁ライフをお望みなんですか』
白「とにかく今僕は温泉に入りたいんだよ。温泉ってとっても広いお風呂なんでしょ?そうと分かったらこんな狭苦しいしみったれた部屋にいつまでもいられないよ僕みたいなフリーマンは」
『気楽なこと言っててボンゴレに見付かったらどうする気ですか!お風呂までついていけないんですよ私。隊長だってメガネ取ったら目が3になるに決まってます。たった1人で白蘭様を危険な場所へ放り込むなんてそれこそ噴火活動中の山へハイキングに行くようなものですよ』
白「安心して寅チャン。何かあったらすかさず死んだフリするから」
『そういうところが心配なんです』
白「大丈夫だって、要は僕が1人にならなきゃいいんでしょ?正チャンはメガネ取っても0.0013くらいの視力はあるはずだから辛うじて役に立つよ」
『そうですか?……ていうか隊長どこ行ったんです?』
白「温泉だよ」
『あンのヤロォォオ!!!』
白「いやー僕実は温泉って初めてなんだよねードキがムネムネしちゃうよー」
『入江隊長野郎め良い人ぶって油断させておきながら私1人に白蘭様を押し付けるなんてそんな人だとは思わなかったよ。今頃開放的になった隊長は調子乗ってバタ足の練習とかしてるんだろうな』
白「その正チャンへの悪口の中にさりげなく「白蘭さま邪魔だなぁ」みたいなメッセージが込められてない?」
『やだなぁ被害妄想も大概にして下さい。じゃあ女湯こっちですので、本っ当にくれぐれも正体がバレることのないように気を付けて下さいね!』
白「ナメないでよビャクティーヌがそんな馬鹿やるわけないでしょ」
『白江さんです』
『あーもう白蘭様のことが心配で全く温泉満喫できなかったし……。さーて私の憂鬱の原因の九割を占めてるホワイトフラワーはどこに……』
自動販売機が立ち並ぶ横に設置された椅子に座る、見慣れた3人の後姿を見つけた。
…3人?
『武様ぁ゙ぁぁ!!?』
山「よー寅!お前も温泉帰りか?髪の毛ビチャビチャだぞ」
『ちちちちょっと急いでたもので………あの……ところでそちらのお2人は……』
山「おー、さっき風呂ん中で知り合った入江さんと白江さんだぞ」
白「やっほー寅チャン仕方ないから白江さんって名乗ってあげることにしたよ!」
『名前を呼ぶなアアア!!』
山「ん?そっちも知り合いか?いやー友達の輪なのな!」
白「扇風機の前で一緒に「ボェエェエェエ」ってやった仲だもんね本山くん」
山「山本なのな!」
白「なのな!」
山「な!」
『ちょ、たいちょ……入江さんがついていながら何故こんなことに!?いとも簡単に最悪の領域へスキップで侵入してんじゃないですかあの人!』
正「知らないよ僕はその時メガネが曇ってしまってソレどころじゃなかったんだ」
『なんで風呂でメガネ外さないんですか!?目が3になるからですか!?』
正「うるさいなぁ頑張ったら8にもなるよ」
『すご!?』
正「そんなに焦らなくてもあの野球少年と白江サンは直接面識ないんでしょ?なんとかなるなる」
『入江さんこの旅に来てから適当度増してませんか!?』
山「ところで寅とこの2人はどういう関係なんだ?」
『え……え゙!?いやその……』
白「あぁこの2人は僕の家族だよ。正チャンはやんちゃ盛りな靴磨き担当の次男。僕は一家で絶対的地位に君臨するマシマロ担当の長男で、寅チャンはネコジャラシ担当の犬」
山「へー」
『待たんかアアア!!』
白「なに?あっもしかしてネコジャラシよりぺんぺん草がよかった?」
『違うわ!!なんで私だけペット枠!?いくら相手が武様だからって設定に手抜きすぎだろ!謎の担当制度までついてきてアンタは私をどこまで最下層に陥れたいんだアアア!!』
白「ってな具合に末っ子の寅チャンは見ての通りツッコミ担当なんだ。分かってもらえた?」
山「3人兄弟なのな!」
『いやあの違……っ』
山「んじゃ俺行くな!他の奴らと卓球してるから気が向いたら来いよ!」
『ちょ……………』
白「寅チャン卓球行『行きません』
正「なんか面倒くさいことになってきたね」
白「正チャンも交えて兄弟が増えちゃったね」
『全部アンタらのせいだろがァァ!!なんで!?なんで顔がバレてるどころか友情築いてきちゃったの!?なんで私との兄妹設定を引き続き使用した上で新メンバー交えてパワーアップさせちゃったの!!?』
白「なんだよ全部僕が悪いみたいな言い方して」
『その通りですけど!!?』