白蘭様といっしょ4
白蘭様のトイレ掃除を手伝っていたらいつの間にか夜になっていた。絶望の淵に立ったまま、私と白蘭様は私の個室に帰ってきた。
白「やっとこさ仕事終了だねー疲れた疲れた!」
『……白蘭様』
白「ん?」
『お願いします1000万払って下さい!!私を助けると思って!ボスならそれくらいのお金持ってるでしょう!?』
白「やだよボンゴレにそんな大金払うの」
『だ、だって借金て……!返すまでミルフィオーレに帰れなくなっちゃうじゃないですか!』
白「別にいーじゃん」
『……え…………?』
白「お金なんか出さなくてさ」
『あ、そっちか………。じゃなくて!駄目ですよ!いくら敵でも壺を壊したのは紛れもなく私で……って違う!壊したの白蘭様じゃん!私に責任ないじゃん!!』
白「でも僕は、僕のモノを勝手に盗ってったボンゴレには1円も払う気はないんだよね」
『え?何か盗られたんですか?』
白「……………」
『…えっと………と、とにかくこのままじゃ私一生ボンゴレでメイドさんじゃないですか!嫌ですそんなの!私ミルフィオーレに……!』
いやでもよく考えてみ?そりゃミルフィオーレにはお世話になったけど、ちゃらんぽらんな白蘭様のお世話係として昇格の道も見えぬまま一生を過ごすより、ボンゴレでシェフ目指して穏やかな日常を送る方が堅実かもしれない……!ボンゴレって変な人は多いけど無茶なことはさせられないし、いつかミルフィオーレと戦うことになってもメイドさんは関係ないから気まずくなることもないし!よくない!?ボンゴレよくない!?
白「……寅チャン?」
『あ………あ、はいっ!』
白「寅チャンはいちいち真面目すぎるよ。もういーじゃん、借金なんて無視してミルフィオーレに帰ろう?」
『いやでも、借金………綱吉様が払えって……』
白「僕だって寅チャンが一生ボンゴレのメイドさんなんて嫌だ」
『でででも壺、綱吉様困るだろうし……っ』
白「……あのさぁ」
『はい……』
白「さっきから綱吉サマ、綱吉サマって。ずっとそれじゃん」
『……………』
白「寅チャンのボスは僕だよね?」
『それは…っ、』
コンコンッ
綱「ちょっと入るよ?」
『あ……は、はいっ』
白「……はーい」
綱「はいコレ、白田さんの今日の日給。ご苦労様でした」
白「ども」
綱「それとも壺代として俺がとっときましょうか?」
白「……いえ」
『……………』
白「間違いなく寅チャンが全額払いますから」
『ちょっと待てェェェ!!!』
白「まったくやかましい子だね」
『それぐらい置いてってくれてもいいでしょう!?私が真面目に働いて返そうと頑張ってるんですから少しくらい協力して下さい!』
白「ふむ、つまり寅チャンは早く借金を完済してしまいたいと?」
『当然じゃないですか!』
白「聞きました綱吉サマ?借金がなかったらこんなトコさっさと辞めてやるのに!だってさ」
綱「へぇ」
『は!?』
白「こんなきな臭い職場で働いてられるか!やーいやーい馬鹿!って言ってましたさっき」
綱「なるほど」
『えっちょっ言ってませんから!!きな臭いとか思ってませんから!!』
綱「さっきの壺騒動で寅にはえらく反感を買ったようだね」
『だから違いますっつの!!ていうか壺騒動って!米騒動みたいに言うなよ!』
白「こんな反逆者もどき置いといて大丈夫なの?ぶっちゃけ辞めさせた方がいいよコレ」
綱「んー……まぁそうだよね」
『え……お、お兄ちゃん……!』
もしかして正式にクビになれる方へ進めてってくれてんの!?なるほど、そうなれば脱出とか物騒なこと考えずに済むじゃん!お金だってミルフィオーレで貯めればいいし!ボンゴレ……名残惜しいけど、私やっぱり………!
綱「でも寅は辞めさせられないな」
『え……?』
白「…いいのかなー?こんなどうしようもない子」
綱「寅には前にも言ったけど、いま使用人が足りてなくて誰も辞めさせるわけにはいかないんだよね」
『……………』
別に……足りないことなくないかな?正直私なんかいなくても使用人の仕事はちゃんと回る気がする。今日もトイレ磨いてただけだし。
綱「それに寅はよくやってくれてるしね。だから辞めさせられない」
白「……あっそう」
綱「それじゃあ白田さんお疲れ様、妹さんは責任を持ってこちらで預かります」
白「うん、宜しく。じゃあね寅チャン、僕は帰るから」
『へ………あのっ……!』
綱「見送り行っといで」
『はい………』
本当に帰っちゃうの?白蘭様。助けにきたって、言ってたのに。
ごねたのは私だけど。
『白蘭様!』
白「ちょ、寅チャン。ここボンゴレの正門だよ?もうちょい白田さん(56)で頑張ろうよ」
『白田さんえらい歳とってない!?』
白「見送りにきてくれたの?」
『あのっ……本当に帰っちゃうんですか?』
白「うん、あんまり長居すると正チャンに怒られそうだしさ」
『で、でも私……』
白「心細いのは分かるけど、」
白蘭様は少ししゃがんで、私の目線に高さを合わせた。
白「嫌がったのは寅チャンでしょ?」
『…………っ』
白「…今の言い方はいじわるだったかな。ちゃんとお金返すって決めたのは寅チャンでしょ、に言い換えるね」
『……ごめんなさい』
白「うん。じゃ、また連絡するね」
『……これで良かったのかなぁ…』
部屋に戻って考えた。いっそ借金なんか気にせずに、白蘭様とこっそり逃げた方が正解だったのかもしれない。肝心なところで決断力が鈍る私はいつもこうだ。
『1000万円稼ぐのって、何年かかんだろーなー………』
今更後悔したって遅いのに。
白[寅チャンのばーか!]
『ぶっ!何!?』
白[優柔不断!あほ!ボンゴレの犬!]
『白蘭様……?まさか戻ってきたんじゃ……!』
白[くそ真面目!ちんちくりん!そんな寅チャンに電話だよー!]
『って着信んんん!!!久々に騙されたわ!!』
白「もっしもーし」
『別れて5分と経ってないんですけど!?』
とか言いつつ、同じみの上司の声に安心してる自分がいる。
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