メイドさんの朝4
−−−−−夜
『つ…っかれたー!一日中動いてたよ…。まぁ朝が一番忙しかったけど…』
あ、そういえば携帯の電源入れてなかったな。連絡してくる人なんかいないだろうけど一応入れておこう。なんか今私すごくしんみりとしたこと言ったな。
『携帯はー……っと。あったあった』
手に取った瞬間、着信を知らせるランプが光った。
[寅チャン電話だよー。寅チャン電話だよー。寅チャン電話だよー]
『あんぎゃああああああ!!!!』
ななななななんで電話!?まだ電源入れてないよね!?ね!?どうしようこの携帯呪われてるううう!!た、助け…ッ誰か助けて下さい!!骸様とかゲーム好きだし機械詳しいかな!?って任務中だった!あのあと結局怒った綱吉様に麦茶だけ持たされて外放り出されたんだった!それじゃあ私が行く先なぜかよくいる綱吉様ァア!!任務中だったァア!!
[寅チャン電話だよー。寅チャン電話だよー]
ていうかしつこい!!もう何回白蘭様に話しかけられてんのさ!分かってるよ!電話だよ!だから何だよ!白蘭さ………
『白蘭様に助けてもらえばいいんだ!』
そうだよ!なんでこんな簡単なことに気付かなかったんだろう!こんな時いつも私が相談する相手は白蘭様じゃない!原因もだいたい白蘭様だけど!よぉし、早速白蘭様に電話をかけよう!
『その電話が壊れてるんだったァァァ!!』
ていうかよく見ると着信は白蘭様からだった。勇気を振り絞って通話ボタンを押した。
ピッ
白「ちょっと寅チャン出るの遅いよー。何してたの」
『白蘭様ですか…?』
白「は?うん」
『本当ですか…?』
白「白蘭様だよ」
『間違いありませんか…?』
白「何疑ってんのさ。僕の美声を聞けば疑う余地もないでしょお馬鹿」
『うあぁ゙ん白蘭さまあああ!!!』
白「うわっいきなり泣き出した。僕からかけたのにイタズラ電話されてる気分…」
『聞いて下さい携帯が呪われましたあああどうしよおおおお』
白「寅チャン落ち着いて。気持ち悪い。テンション高い。ウザい」
『だ、だって携帯が…勝手に電源切れたり入ったりして……うわあああ絶対幽霊の仕業だー!!』
白「あぁソレ僕がやった」
『は!?』
白「僕けっこう機械とかも解かるんだよね。天才だから。寅チャンの携帯を僕の方から操作して、今さっき電源を入れてから電話をかけたんだ。天才だから」
『え…ちょ、意味が分からない。何それ。白蘭様わたしのストーカーみたい』
白「やめて気持ち悪い」
『私この短い間に2回も気持ち悪いって言われちゃった…』
白「今まで着信音とかも僕が勝手に変えてたのも知ってるでしょ?それで気付かなかった?」
『そういえば……。っあ゙ーもう何ですか白蘭様は!!イタズラにも程ってモンがありますよ!』
白「イタズラじゃないよ」
『そうですねイタズラじゃなくてイジメです!とんだ上司ですよ!もォォ私ホントにボンゴレのメイドさんになっちゃおうかな、こっちの人はみんな優しいし!』
白「クビになっちゃえ」
『……へ?』
白「遅刻してクビになっちゃえば寅チャンが帰ってこれると思って、朝携帯のアラームが鳴らないように電源切った」
『え……そうだったんですか…』
白「それなのに、なんで寅チャンはそっちで楽しそうにやってるの?ホントはそっちでメイドさんになりたくなってきたの?」
『ち、違います…!』
白「違わないよ。だってそっちの方がみんな優しいんでしょ?イタズラだってされないんだろうね」
『ちょ……えー何拗ねてんですか!さっきのは売り言葉に買い言葉ってやつで―……』
白「僕のいないところで勝手に幸せにならないでよ」
『…白蘭様……?』
白「もう知らない。それじゃ、僕から用は特にないから。寅チャンから連絡がないから心配になっただけで。それじゃあね」
『ちょッ…』
ッツー、ツー、ツー………
『…どうしよう…。なんか分かんないけど白蘭様怒らせちゃった…』
しかも本気っぽかったし。…もしかして私、見捨てられた?
どうしよう調子になんか乗らなきゃよかった。ここでメイドになりたいなんて思ってないよ。冗談でもこっちがいいなんて言うんじゃなかった。
白蘭様にいらないって言われたら、私がミルフィオーレに戻る意味なんてないのに。
ガタ……ガタガタ…ッ
『何…。今私泣いてもいいほど切ないシーンのはずなのに風で窓がうるさいって…。ムードねぇな…』
仕方なく窓の外の様子を見に、少し歩いてカーテンを開けた。
ら、
『おばけえええええ!!!!』
白「やっほー寅チャン!」
『ぎゃああああ白蘭様が化けて出…!!…え?白蘭様?本物…?』
白「またそのやりとり?ねー寒いから開けてよ」
『なんで白蘭様が窓の外に……ここ3階なんですけど……いやそれより……』
白「話は中で聞くからとにかく入れて?自分で言うのもアレだけどこの壁に張り付いてる姿けっこう気持ち悪いと思うんだよね」
『分かりました…』
私は窓を開けて、白蘭様を部屋に入れた。なんだか呆然として頭が働かない。
白「あー寒かった」
『あの…白蘭様ここへ何しに…』
白「うわっ寅チャン冷たいね。せっかく助けにきてあげたのに」
『た…え、助けに!?』
白「じゃなきゃ来ないよこんなとこ」
『でも白蘭様さっきすごく怒って…』
白「さっき?いつ?」
『だから電話で…もう知らないって言われました』
なんか自分で言ってて悲しくなってきた。さっきあんなことを言っていたのに、白蘭様はいったいどういう気持ちで助けにきてくれたというんだろう……!
白「あぁーアレ!冗談冗談!ほら売り言葉に買い言葉って奴?えっ、気にしてたの?寅チャン可愛いとこあるねー!」
『白蘭様ァアア゙!!』
白「うわっ急に大きい声出さないでよ。その癖直してよ」
『私がどれだけ…!あれだけ白蘭様に尽くしてきたのにあんな一瞬で捨てられた私の気持ちが分かりますか!?』
白「まるで僕と寅チャンが恋人同士だったかのようなセリフだね」
『もう白蘭様なんか知らない!私ここの家の子になる!!』
白「それは無理だよ」
『は?』
白「うん、実はさっきセキュリティに引っ掛かっちゃってさ。多分もうすぐ誰か来るよ」
『馬鹿ァアアア!!!』
白「いやー困った困った」
『ホントにそう思ってますか!?どうしようとにかくベッドに隠れ…っ』
綱「寅!!」
『ぎゃああ!!綱吉様!?ななななんですかいきなり!!乙女の部屋に突然入ってくるなんて野蛮な、』
綱「さっきこの辺に不審者が侵入したらしいんだ。何か知らない?」
『無視かよ…けっこう常識的なこと言ったと思ったんだけどな…。べべべ別に何も誰も来てませんよ?勘違いじゃないですか?』
綱「……寅」
『はい?』
綱「後ろのベッドでもぞもぞしてる物は何?」
白「ぶはッ寅チャーンまだ?布団の中だと息苦しいんですけどー」
『出るなアアアアア!!』
白「何怒ってんの?生理?」
『あんた頼むから空気読んで下さい…!!』
綱「寅………」
やばい!この人が白蘭様で、ミルフィオーレのボスってことがバレたら間違いなく死ぬ!
『ちが、違うんです!この人は別に怪しい人じゃなくてその…!!』
綱「寅が……部屋に男を連れ込んで……」
『あらぬ誤解を受けた!それこそ違いますよ綱吉様!あのだからこの人はえーっと』
白「ふーん、君が“綱吉サマ”?宜しくね。僕は、」
『っだああああ!!!兄です!!この人お兄ちゃんです!!』
綱「…は?」
白「お兄ちゃん?」
咄嗟の嘘にもほどがある。
だけどどう説明しろって言うの?
next..