メイドさんの朝3

了「しかし困ったな」

『なんですか…?』

了「俺は今日用事があってな。そろそろ準備しなければいかん」

山「あぁ、それなら俺がこいつを送り届けますよ。50階まで行きてぇんだろ?」

『はい。すいません、お世話かけます』

了「それじゃ頼んだぞー!」

山「んじゃ行くか!50階ぐらいならすぐ着くって」

『うう…1階上がるのに30段あるから50階まで行くには1500段かぁ……』

山「大丈夫なのな、俺3000段ある神社の階段上ったことあるけどそのあと普通にマラソン参加したぜ?」

『武様の体力云々よりその日のスケジュールの組み方に疑問を感じます』

山「今日のトレーニングメニューのこととか考えながら上ればすぐ着くのな!」

『余計疲れてきたんですが……。あの、50階に着くまでに私死んでるかもしれませんが武様は屍を乗り越えて先へ進んで下さいね』

山「やだよ。別に俺50階に用事ないもん」

『あ、足が………。そうだ気分を変えて後ろ向きに進んでみよう。アレなんかさっきより早く進むぞ!』

山「さっきと変わんねぇぞ」

『そんな事ないですよ、なんかメンタル面的にいい感じどぅわわわあああ!?!?

山「こけた!

『痛ァァァ!!!お尻が!!お尻が!!』

山「大丈夫か?歩けっか?」

『が、頑張ります…!うう……』

山「痛いか?サロンパス貼るか?」

『いやお尻にはちょっと……。こんな事になるなら普通に歩いときゃよかったよ…』

山「まったくだな」

『こんな調子で50階まで上れるかな…』

山「グリコでもするか?」

『なぜ…』

山「気が紛れるかと思って」

『なるほど、これで階段を上る苦しさを和らげる作戦ですね!同時にお尻の痛みも紛れる!さすが武様、階段のみならず私のお尻のことまで考えてくれてるなんて!』

山「別にそこまで尻中心に気づかったつもり無ェからその俺が変態くさく聞こえる台詞取り下げてくんね?」

『じゃあ行きますよ。ジャーンケーンでほぉい!』

山「……ちょ待、今のどのタイミングで出せばいいんだよ」

『え?だからほぉい!のい!辺りで』

山「いやいやいや俺ほ!で出しちゃったじゃん。何ほぉい!って。なんで伸ばすし」

『なんでほ!で出しちゃうかな。気早いな』

山「いやその前にかけ声は普通いんじゃんホイ!だろ?」

『何ですかいんじゃんって…。もうそれジャンケンじゃないじゃないですか』

山「ジャンケンだよ!」

『じゃあジャンケンって言いましょうよ!』

山「いんじゃんだよ!!」

『………。武様私大変なことに気がつきました』

山「ん?」

進まないんじゃないでしょうか

山「その通りなのな!」

『結局楽に上れる方法なんかないんですね…上るべき段数は一向に減らない上お尻も痛みも収まらないどーせ私なんか』

山「お前今日なんか暗い」

『なんか今日疲れてばかりなんで…』

山「メイドも大変なのな」

『主に武様と行動し始めた辺りから疲れてきてんですけどね』

山「ま、気楽に行こうぜ。俺も最後まで付き合うからさ」

『あ……えと、ありがとうございます』







山「到着ー!」

『つ…ッ着い……ッ!!』

山「ハイ吸ってー吐いてー」

『…着いたああああ!!』

山「お疲れさん。ランボの部屋行くんだってな?」

『はい!』

山「んじゃすぐそこの部屋だ。開けんぞ?」

『ついに…ついにこの時が…っ』

ガチャッ


ガチャガチャガチャ


『………?』

山「そういや今日から日本旅行に行くっつってたな」

そんなァァァァァァ!!?

山「鍵閉まってるし」

『………うぇ…ッヴェ…ッヴェエエエエ!!!』

山「えっ何泣き声!?

『そ、そんな…それじゃ私なんの為にここまで頑張って…ッ!おとなしくコックさん待ってればよかったぁああ!!』

山「コックさん?ランボの部屋に来たのにコックさん?」

『そういえば理由も話してませんでしたね……。ここまで付き合ってくれてありがとうございました、私少し休んでから行きます……。次に生まれ変わるとき私は貝になりたい……』

山「なんかよく分かんねぇけどコックに用があるんなら急がなくていいのか?もう7時だぞ?」

……ぁあああ!!ハンバーグうううう!!!

山「なんか大丈夫?」


私は急いで階段を駆け下りた。人間死に物狂いになると結構なんでもできるモンだね。





『お待たせしました…!』

雲「遅い。何してたのさ?」

『私なりに人生を一生懸命生き抜いてました……』

雲「は?」

『とりあえず召し上がれ。お口に合うかは分かりませんが、済みましたら呼んで下さい。食器片付けますので』

雲「んまい」

『え?あ、エヘヘ』


やっと一段落ついたと思ったらやる事がなくなった。ので意味もなく階段の手すりを拭いていたら食事を終えたらしい雲雀様が出てきた。

雲「あ、そこにいたの。美味しかったよハンバーグ。さすがハンバーグ。また作ってよね、暇な時にでも」

『あ…ありがとうございます!』

雲「じゃ、僕はちょっと買い物に行ってくるから」

『行ってらっしゃいませ!』

なんか褒められると嬉しいねやっぱ。どちらかというと私よりハンバーグを褒めてた気もするけど。
でも料理を作って喜んでもらって、って今のやりとりに少しやりがいを感じてたり。今まで仕事では料理を運ぶことしかしてこなかったしな。いっそこのままメイドを続けてコックにでも昇格なんて……

綱「あ、寅いた!ちょっと何やってんの。骸は?」

『………あぁああ゙――!!雲雀様に逃げられたァァ!!』

綱「は?雲雀さん?」

『今から雲雀様つかまえてきます!!大丈夫!私を信じて!!』

綱「いやだから骸をね、」

『でも確か買い物行くって言ってたな。もう行っちゃった?どうしよう雲雀様って普段どこ行くの?分からない。どうしよう。分からない。胃が痛い』

綱「…もういいよ。俺が骸連れてくるから廊下の掃除してて」


…前言撤回。昇格できるほどメイドさん極めてませんでした。





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